出会い 20110314

薄暗かった外が段々と明けてくるが部屋に寝ている男性は一向に目を覚ます気配がない。

額に触れて見ると高熱だと思ったあの時よりは発熱は落ち着いてきているようだ。

年齢は20代半ばぐらいだろうか?

あの時は病人だと思ってとっさに自分の部屋に連れてきたが、よく考えればこんなことしたら危ないのでは…と藍は今更ながら考えていた。

もう一度ベッドに眠る特攻服?の男性の方を見ると目を静かに開いていた。
まだ焦点が合わないのか、ぼうっと天井を見つめている。

藍は恐る恐る声を掛けてみた。

「あの…目が覚めたんですか?」

「………」

「あのう…」

再び声を掛けると、その人はさっとベッドから上半身を起こし、何かを探すように辺りに手を動かした。
目的物が見つからなかったようで、警戒するような厳しい視線で初めて声を発した。

「ここはどこだ?お前はだれだ?オレの太刀はどこだ?」と立て続けに質問を発した。

「ホテルです。貴方が倒れているのを下で見つけて、連れてきたんです。覚えていませんか?貴方の倒れていた辺りの物はベッドの横に置いてあります。そして私は小笠原藍です」

「ほてる…」

意味が分からないとばかりに首を傾げ、鸚鵡返しをされたので質問の意図がちがったのかと藍は思い直し、

「あ、場所なら河原町御池です」

「河原町御池なら長州藩邸だな」

「ええ、以前はそうですね」

「は?以前…?今はないということか?」

「そうですね。その通りです。」

(何をそんな当たり前の事をこの人は聞くのだろう?まさか藩邸が現存すると思って見にきたイタイ人じゃないよね???)

急に口を噤んでしまったその人は周りをキョロキョロと見渡し、怪訝そうな表情でしばらく黙ってじっと考え込んでいた。

(酔って昨日の記憶が飛んだとか?それにしても反応が変な人)

「つかぬ事を聞くが、今は何年だ?」

「は?えっと平成2×年ですが…。」

「へいせい…そしてそのせえらあ服…という事はもしかしたら蘇芳の居た時代?!」

一人でブツブツと呟いているその男性から、自分の知っている懐かしい人物の名前が出たことに驚く。

「蘇芳ちゃん?貴方、蘇芳ちゃんのお知り合いなんですか?」






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