恋の始め方


【所属事務所応接室】

「では、今回の映画の見所は?」

「そうですね、主役で兄役の藤堂さんとの別れのシーンですかね。兄弟の絆、家族の絆を強く感じるシーンになってるとおもいます。」

「そうですか。撮影中の現場はどうでしたか?」

「いろんな方と共演ができて、凄く勉強になりました!あ、藤堂さんって面白くって、とっても頼りになって、現場でもお兄さんみたいで♪現場は毎日すごく楽しかったですよ。」

「へぇ〜藤堂さんとはずいぶん仲良くなったんですね。」

「はい。そうですね〜。たまにメールとかしますし、一緒にいて面白い方ですよ!」

「ふむふむ、では最後にどんな方に映画をみてもらいたいですか?」

「そうですね。若い方にはもちろんなんですが、その親の世代にも見ていただけると嬉しいです。」

「はい、ありがとうございました〜!インタビューはこれで終了ですのであとは何枚か掲載用の写真を撮らせていただきますね。」

「はい、わかりました。」

お化粧を直してもらうと、カメラに向かってにっこりと微笑んだ。




母親が面白半分に送ったオーディションがきっかけで、あれよあれよという間に今の仕事について約1年。
学校もあるし、毎日はそれこそあっという間だけど、色々なことにチャレンジできるという所は新鮮で自分としてはとてもありがたく、全力投球していた。

「お登勢さ〜ん、インタビュー終わりました。次は?」

「はい、おつかれさん。次は…番宣のTV収録やね。今から局に送っていくから」

「はい。了解です!今日いろんな方が出演されるんですよね?楽しみだなぁ。じゃ、準備してすぐに車に行きますね〜♪」

手早く自分の荷物を整理して事務所の駐車場に向かった。


***


【某テレビ局控え室ロビー】

トントンと楽屋のドアをノックすると、直ぐに大きな声で「どうぞ」と中から返事があった。

「失礼しまーす」

静かに扉を開けると、抜けるような青空に輝く太陽のような笑顔を浮かべる男性、今をときめく坂本龍馬さんの姿。

今日の番組の司会者なのもあって、やや緊張しつつ、でも明るく元気に挨拶をした。
何度もお仕事を一緒にしているとはいえ、やっぱり挨拶の時は少し緊張する。

「おはようございます。龍馬さん。今日もよろしくお願いしますね。」

「おお、蘇芳か。おはようさん。今日も相変わらずかわいらしいのう。」

「あはは、龍馬さんたら、いっつも口が上手いんだから。」

「そうかの?わしはほんまのことしかいうちょらんがの。」

「ほらほら、そういうとこですよ。」

「むう。そんなことはないんじゃが…そうじゃ、他の共演者にはもう挨拶にいったか?今日はいつもより番宣が多くて人が多いんじゃ。わしは何人かまだいっちょらんから一緒にいかんか?」

思ってもみない提案だったが、最初の挨拶はどうしても緊張してがちがちになっちゃう私としては是非にとお願いしたい!

「いいんですか?お邪魔じゃなければ是非、よろしくお願いします。」

くしゃり嬉しそうな笑顔を浮かべて「ほうか」といってくれる龍馬さんに続いて、彼の楽屋を出た。


「今から大久保さんと桂さんに挨拶にいくんじゃが、おまんは顔を合わせたことはあるかの?」

「いえ、別のコーナーに出られるんですか?お二人とも初めてお会いさせていただくんです。」

「ほうか、ほうか。そんならよく顔を覚えてもらうとええが。二人ともええ人じゃき。」

「そうなんですね。マネージャーの話では近々仕事が一緒になりそうなんですよ。」

「ほう、そりゃ羨ましい話じゃの。二人とも人気者じゃし。」

「そんな、龍馬さんだって大人気じゃないですか!」

「本命から人気がなきゃなんにもならんぜよ」

「本命?龍馬さんならどんな女性でもすぐに大人気ですよ!」

「ほうかのう?」

「そうですよ〜!」

絶えることのない会話を楽しみながら同じような扉が並ぶ楽屋の廊下を二人で並んで歩く。

(やっぱり龍馬さんは話やすいな〜。飽きさせないというか…やっぱりさすが!だわ〜。)


「そうじゃ、おまん、この仕事で終わりかの?終わったらご飯にでもいかんか?」

「わ!いいですね!後の予定をマネージャーに聞いてみますね!」

「坂本君…君はこんな乳臭い小娘にまでそんなことをいっておるのか」

「こ、小娘!?」

突如、背後から聞こえてきた声にびっくりするとともに言葉の意味に固まってしまった。

「おお、大久保さん、今からおまんの楽屋に挨拶にいこうとおもっちょったとこぜよ。」

「…ふんっ!今頃やってくるとは、坂本君らしいな。」

龍馬さんは、気にする様子もなく笑っているが大久保さんってこんな人なのかとあっけにとられていた。

「ところで、小娘。初対面の相手に挨拶もなしか。」

「あっ、すみません。初めまして、蘇芳です。よろしくお願いします」
私は、深々と頭を下げた。

「まあ、よかろう。ところで、坂本君・・・」

それだけ!?なんて思ったけれど、初対面だしここは大人しくしていた方がいいよね。
なんて、自分に言い聞かせて二人の会話を聞いていた。
ときどき、会話に参加したり相槌を打ったりして数分がたった。

「時に坂本君、いつまでここにいるつもりだ。どうせ、まだ挨拶周りが終わってないだろう」

「そうじゃった!これから桂さんのところにいってくるぜよ」

大久保さんと別れた私たちは人気俳優の桂小五郎さんの楽屋を尋ねた。

「おう、ここじゃ、ここじゃ!」

ドンドン!

(うわっ、龍馬さんすごいノック音!)

大胆なノック音とともに大きな声で「おーい、桂さんはおるかの?」と声をかけると、中から、龍馬さんの振る舞いに動じない様子で「どうぞ」と返事があった。

「おう、桂さん久しぶりじゃの!」

ずんずんと中に入っていく龍馬さんに続いて、控えめに「失礼します」と声をかけ、恐る恐る楽屋に足を踏み入れた。

(わ、なんか落ち着く薫り!お香?じゃなくて!!挨拶!挨拶!!)

龍馬さんは自分の挨拶を終えると私を前に出すようにして、「今日は可愛いお供もつれきたぞ」と自己紹介の機会をつくってくれた。

「初めまして!蘇芳といいます。今日は別のコーナーなんですが、よろしくお願いします。」

「はい。はじめまして。桂小五郎と言います。よろしくお願いします。」

(わぁ、テレビでは何回も見たことあったけど、やっぱりすごく雰囲気のある人だなぁ。和美人?)

ぼぅと見つめてしまっていたことにはたと気付いて、取り繕うように口を開いた。

「それにしてもこのお部屋、いい香りがしますね」

「あぁ、オイルランプ置いてるから。これ喉なんかにもいいんだよ」

「そうなんですか。綺麗だし、なんか落ち着きますね!」

「お褒めに預かり光栄だな。」
ふんわりと微笑む桂さんにぼんやりと見とれてしまったのを龍馬さんに突っ込まれてしまい、真っ赤になっている顔を隠しつつ、楽屋から失礼した。



***


数日後…

さて今日のお仕事は?

歌番組『●ステ』に出演(大久保√)

映画の顔合わせに出席(桂√へ)

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