動揺と対策
「あ〜ぁ、今年は海にいけなかったなぁ」
自室前の縁側に腰を下ろし、溜息交じりで少し高くなった秋空を眺めた。
「おや、異なことを言うね。今年はまだあと4月ほどあるだろう?」
ふいに上から降りてきた声に、そちらへ顔を向ける。
「小五郎さん!?」
にっこりと微笑む小五郎さんに独り言を聞かれたことが恥ずかしくて頬がカッカとしているのがわかる。
「それにしても、海が好きなのかい?だったら折を見て出掛けようか」
「あ、さっき言ってたのは海水浴のことです。」
「かいすいよく?とは…蘇芳、君は海で泳ぐつもりなのかい?」
「ええ!毎年友達といってたんですよ。そのために水着を買いにいったりして」
「みずぎ…泳ぐための着物だね。」
「そうです!あ…」
そこまで言って気がついた。
(そっか、ここではきっと女の人が泳いだりしないんだ!)
「なんでもないです」
「ん?何でもないことはないだろう。泳ぎのための着物か…ふふ、想像がつかないな。海女のような格好かな?」
「尼!?たぶん、違いますよ。ちょっと待っててください!写真かプリクラなかったかなぁ〜」
自室に戻り、最近はあまり開かなくなった未来からの荷物を探ってみる。
(水着のプリクラはないよねぇ。写真もはいってないや。うーん…)
「あ!この中に確か…」
***
「これが水着です!」
「こ、これは…」
絶句する私の横で蘇芳は自慢げに答える。
蘇芳から渡されたのは彼女が愛用してたというあいぽっどたっちという未来のからくり。
このからくりも驚くべきことはたくさんあったのだが、それ以上に水着に驚いた。
からくりの中で年若い女子が想像をはるかに超えた「水着」を着用して、惜しげもなく肌をさらし踊っている。
「蘇芳、君はこの格好で海に行きたいと言っていたのかい?」
「い、いや、さすがに無理なのはわかってますから…」
「蘇芳!こんな風に肌をさらしてはいけない。誰が見ているかわからないからね。肌をさらしていいのは決まった相手だけで親兄弟でもみせてはいけないんだ」
「はぁい…」
「それにしても…このような格好を…毎年…」
(今後の女子教育はしっかりとしたものにしないといけない)
未来の女子教育の在り方についてきちんと考えなければと決心すると同時に、その場所からやってきた蘇芳についてもしっかり教育しなければいけないと再度心に誓う桂であった。
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