隠れた策士

会合後のお茶の時間

蘇芳ちゃんが頬を染め、そこにいる面々に一言告げた。

「私、慎ちゃんにお付き合いしてもらうことになったんです。」と。


***


皆が姉さんに興味津々なのは知っていた。

女性関係で華やかな噂のある高杉さんや龍馬さんはともかく、あの武市さんや以蔵くん、桂さんそして大久保さんまでも興味を示している。


「慎ちゃん…高杉さんや龍馬さんっていっつも色々恥ずかしいことをいうけどあれって本気じゃないようねぇ?」
「あぁ、あのお二人はね…。高杉さんの花街での噂は良く聞くし、龍馬さんはみんなに優しいですもんね。」
「そっか!そうだよね!
あれだけ言われると勘違いしちゃいそうになるよね。慎ちゃんに教えてもらっといてよかった〜」

「ありがとう」と無防備に笑う姉さんの笑顔はとても輝いていた。



「慎ちゃん!武市さんがすごい笑顔で『おしおきとご褒美どっちがいい?』っていうんだよ。私どうしたらいいんだろ?」
「それは困りましたね。俺が一緒に話聞いてあげますよ。」

「慎ちゃ〜ん、以蔵がすぐげんこつ落とすんだよ〜」
「以蔵くんは武市さん命だから…あんまり気にしちゃ駄目っス」

「慎ちゃん。桂さんって優しいよね。いっつもさりげなく高杉さんから助けてくれるんだよ」
「桂さんは皆さんにそうですよね。高杉さんの操縦術がすばらしいっス。」

「慎ちゃん、大久保さんがおいしい干菓子を食べに連れていってくれるんだって」
「大久保さんはお忙しい方だから申し訳ないっス。俺が連れていきますから場所と名前だけ聞いといてください。」


いつも姉さんは満面の笑みで「ありがとう」とお礼を言ってくれた。


***

息を飲む者、呆然とする者、大声をあげる者、平静を顔に貼り付ける者、それぞれが一様に動揺していた。

「なんだとぅ〜!!」

「蘇芳、な、なんで…中岡なんじゃ?」

「蘇芳さん、中岡に『お付き合いしてもらう』とは一体…」

「え?だって、慎ちゃんいつもいろいろなことを教えてくれるし、もの凄〜く頼りになるんですよ!」

「ね?」と赤い頬のまま、満面の笑みを俺の方に送る。

とんとんと指で自分の横のあたりを叩くと、すっと隣に蘇芳ちゃんが座る。

「そういうことですから。皆さんよろしくお願いします」

油断がならない面々に牽制をした。




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