周章狼狽5
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(主劇)
約束の日の当日
私は反対を押しきり、約束のお店へ出掛けていた。
(長州藩 桂小五郎)
人目を欺くための変装をし、蘇芳さんの姿を追う。
約束の店は小間物屋だった。
店の前で一度辺りを見回し、目立たないところで店の商品を見るふりをする。
遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえ、それとなく目線を向ける。
例の侍らしい男が近付いてきた。
(!!!あれは…。)
私は彼に見付からないよう顔を背けた。
(主劇)
「蘇芳さ〜ん!来てくれたんですね!来てくれないかもしれないと不安だったんですよ」
先日声をかけてきたお侍さんが大声でにこにこしながら近付いてきた。
その迫力に圧倒されながらも
「いえ…先日はボーとしててすいませんでした。」と答えた。
彼、伊藤さんに連れられ、近所のお茶屋さんに移動し、店先の席に座った。
「先日は急に声をかけてすいませんでした。」
僕も動揺しててと赤い顔で話をする伊藤さんは悪い人には見えない。
「びっくりしましたよ〜。言われてる意味が解らなかったし」照れ隠しでへへっと笑った。
そんな私を「本当に不思議な人だなぁ」とまじまじと見詰めてくる。
ふいに、伊藤さんは私の右手をとり、
「やっぱり可愛いなぁ。僕とお付き合いしてくれませんか。」と言った。
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