三人の貴方
・
翌朝、いつものように高杉さんの朝食を作るために炊事場に向かう。
(あ、小五郎さん、またあの料理が得意な小五郎さんが来てくれるのかな?でも朝の挨拶は三人にしたいし…)
そう考えると小五郎さんの私室に足を向けた。
***
「小五郎さん、失礼します」
「…………」
(あれ?返事がない?)
予測された小五郎さんの涼やかな返事は返ってこない。
(この時間に小五郎さんが起きていないっていうことはないよね。もしかしてどこかで入れ違っちゃったかな?)
確認するために小五郎さんの私室の戸を静かにひいた。
(あれ?一人だけ寝てる?)
昨夜ひいてあった布団のうち、2つは既にきれいに畳まれていて、残りのひとつに小五郎さんが横になっている。
寝床の脇にそっと腰を下ろしてきれいな寝顔を覗き込んだ。
気配を感じたのか瞼が震え、小五郎さんの瞳と合った
「ん。おはよう蘇芳」
「お、おはようございます。いつもより遅いお目覚めでしたね」
「ああ、今日は良く寝たよ。なんだかとても体が重くてね」
「え!大丈夫ですか。あ、他の小五郎さんたちは?」
「他の?一体何のことだい?」
「え?昨日のこと覚えてないんですか?」
「あぁ、いや、覚えているよ。……全部。」
「じゃあ…?」
「三人分の記憶をそれぞれ覚えているんだ。昨日一日の出来事。そう、君と私とのこと。それぞれね」
(あれ?なんかちょっと不機嫌??)
「え、だって全部小五郎さんだし…」
「それでも私は不快だな。私の知らない蘇芳と他の男とのことを知るのは」
「そんな!」
「さて、今日は体の調子もいつもどおりとは言い難いようだし、蘇芳には一日看病してもらうかな」
「はい、それは構いませんけど」
「じゃあ、まずどうやって私の機嫌をとってもらおうかな」
ニコリと笑う小五郎さんに今日は昨日以上に大変だけど、でも素敵な一日になる予感がした。
→アトガキ
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