三人の貴方



翌朝、いつものように高杉さんの朝食を作るために炊事場に向かう。

(あ、小五郎さん、またあの料理が得意な小五郎さんが来てくれるのかな?でも朝の挨拶は三人にしたいし…)

そう考えると小五郎さんの私室に足を向けた。


***


「小五郎さん、失礼します」

「…………」

(あれ?返事がない?)

予測された小五郎さんの涼やかな返事は返ってこない。

(この時間に小五郎さんが起きていないっていうことはないよね。もしかしてどこかで入れ違っちゃったかな?)

確認するために小五郎さんの私室の戸を静かにひいた。

(あれ?一人だけ寝てる?)

昨夜ひいてあった布団のうち、2つは既にきれいに畳まれていて、残りのひとつに小五郎さんが横になっている。
寝床の脇にそっと腰を下ろしてきれいな寝顔を覗き込んだ。
気配を感じたのか瞼が震え、小五郎さんの瞳と合った


「ん。おはよう蘇芳」

「お、おはようございます。いつもより遅いお目覚めでしたね」

「ああ、今日は良く寝たよ。なんだかとても体が重くてね」

「え!大丈夫ですか。あ、他の小五郎さんたちは?」

「他の?一体何のことだい?」

「え?昨日のこと覚えてないんですか?」

「あぁ、いや、覚えているよ。……全部。」

「じゃあ…?」

「三人分の記憶をそれぞれ覚えているんだ。昨日一日の出来事。そう、君と私とのこと。それぞれね」

(あれ?なんかちょっと不機嫌??)

「え、だって全部小五郎さんだし…」

「それでも私は不快だな。私の知らない蘇芳と他の男とのことを知るのは」

「そんな!」

「さて、今日は体の調子もいつもどおりとは言い難いようだし、蘇芳には一日看病してもらうかな」

「はい、それは構いませんけど」

「じゃあ、まずどうやって私の機嫌をとってもらおうかな」



ニコリと笑う小五郎さんに今日は昨日以上に大変だけど、でも素敵な一日になる予感がした。






→アトガキ



[ 135/136 ]

[*prev] [next#]

[top]



QLOOKアクセス解析




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -