三人の貴方

.

自室で食事をとるという小五郎さん(たち)
それを面白がって一緒に食事を取るといって付いて来た高杉さん
そして私。
朝餉を終えた私たちはほっと一息ついていた。

「小五郎さん、これからの予定は?」

「午前中は隊の稽古をみることになってるから道場か稽古場に顔を出そうと思うんだが」

「そうですか。だったら、私も見学させてもらってもいいですか?」

「ああ、もちろん」
「今日ばかりはそうしてもらうほうが何かあったときに助かるし」
「見学だけでいいのかい?」

「はいっ!あ!」

「どうかしたかい?」

「あ、いや、もしかして剣術の技能の分散してるんじゃ…って」

「…それは可能性としてありうるな…どうしたものか」

私と小五郎さん(たち)がうーんと悩んでいると「よし、それなら俺が試してやる!!」と高杉さんが意気揚々と立ち上がり、持っていた刀を横にぶん!と振った。

「「いっ!」」

私はお茶を足すために少し後に座っていたので被害はなかったのだが、鞘に収まったままとはいえ、高杉さんが思いっきり振った刀に真ん中に座っていた小五郎さんと先ほどすばらしい包丁捌きをみせていた小五郎さんにクリーンヒットしていた。

「晋作、危ないじゃないか。私はまだ茶を飲んでいたんだよ」

「ふん。こうするのが一番手っ取り早いだろ。稽古はお前だな」

「そうみたいだね」

一人被害を免れた小五郎さんは手にあった湯飲みを静かに置いた。


***

「おはよう」

「「「「おはようございます!桂さん」」」」

稽古場に入ると相変わらず活気のある稽古風景が広がっていた。

以前は小五郎さんと距離があった隊士さんたちも少しずつ変わってきている。

(蘇芳さんの影響が大きいんですよっていろんな人に言われる事があるけど、小五郎さん自身がいい意味で変わろうとしていることが大きいんだよね)

「さぁ、はじめようか」

「はいっ!!!!」

奇兵隊のみんなの気合の入った返事で今日の稽古が始まった。

(本当は参加したかったんだけど小五郎さんのことも気になるから今日は我慢しよう)

私は邪魔にならないように道場の隅っこで正座して見学させてもらう。

ピリッとした空気の中、木刀が交わる音がいくつも道場に響く。

指導をするために道場内を見て回る小五郎さんの様子を追うように見ていると、不意に目が合った。

瞬間、大きく目を大きく見開いた小五郎さんは数メートル先からこちらに猛然と駆けてきた。

「え?え??」

わけがわからず近づいてくる小五郎さんを見ているとぐいっと抱き寄せられた。


ドシーーーン!!!!カラカラカラ……。

大きな音と木刀が転がる音が響き渡った。



私がさっきまでいたあたりには鍔迫り合いの末、押し負けたであろう方が尻餅をついて倒れている。

小五郎さんを仰ぎ見ると少し眉をよせて困ったような表情で腕の中から開放してくれた。
幸い、倒れた人も大事無いようだ。

「私ばかり気にしていないでちゃんと自分のことも考えてくれないと。全く、肝が冷えるよ」

「ごめんなさい。ありがとうございました」

「うん。怪我がなくてよかった」

小五郎さんに抱き寄せられたときに乱れたらしい髪をすっと直してくれ、また稽古にもどっていった。




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