青花
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「で、このことは…どうする?桂君」
「蘇芳さんですか?」
「うむ。」
「まだ事がわからないまま、彼女に伝えるのは早い気がしますが…」
「しかし…小五郎、伝えてやらねば可哀想じゃないか?」
「私としては、坂本君たちの消息はもうすぐ確認できると思うし、連絡も近々来るだろう。
だから、そちらだけとりあえず伝えようかと思ってる。坂本君たちからの連絡で何か新しいことが分かるかも知れないし。
今日のところは不確かな情報で不安にさせるのはどうかと…」
「そうだな。確かにまだ土佐の件は情報としても不確かな部分が多い。」
「ええ。こちらでも引き続き調べてみますが…」
「ああ、わかっている。こちらでも調べてみる」
「よろしくお願いします」
一通り話を終えたところで他の情報や今後について会合をすすめていると人払いをしたはずなのに、廊下の先から小さな足音が聞こえてきた。
瞬時に警戒した私の反応を見て、他の二人も口を噤んだ。
***
「失礼します。お茶をお持ちしました」
中から声がかかるのを待って、襖を開けると見覚えのある人の姿があった。
「なんだ、小娘か」
「あ、大久保さん!お客さんで大久保さんだったんですね」
「ふん。ご挨拶だな」
「あ、いえ、普通のお茶を持ってきてしまったのでしまったなぁって思っただけです。」
苦笑いを浮かべる私に助け舟を出すように桂さんがやんわりと割って入ってくれた。
「あぁ、そうかい。すまないが大久保さんの分を淹れなおしてもらってもいいかな?」
「はい。そうですね。このお茶だと大久保さんの口には合わないと思いますので」
お茶を淹れ直すために立ち上がろうとすると大久保さんの声がかかった。
「いや、それは遠慮しよう。私もそろそろ藩邸に戻らねばならないからな」
「お!!そうか。そりゃ仕方ないな!!では今日はこれで会合は終わりとしよう!」
嬉々とした高杉さんの表情に桂さんは苦笑いを浮かべていた。
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