清姫
「よし、少し休憩だ!!!」
無事会合も終わり、来客たちを全て送り出して、やっと一息つけるなと先ほどまで会合をしていた部屋に戻ると晋作が大の字で転がっていた。
「………ふぅ…」
「なんだ?小五郎!人の顔を見るなり溜息なんぞついて!」
「別にたいした事じゃないよ」
その様子を目の当たりにしてつい出てしまった溜息に理由があるわけもなく、なんだか少し重い肩に手をあて、左右に首をふっていると襖の向こうから声がかかった。
「失礼します。お茶を持ってきました」
静かに引かれた襖から入ってくる蘇芳さんは藩邸に来た頃に比べると格段美しくなった所作でついその姿に目を奪われる。
「お疲れ様でした。おふたりとも甘い物でもいかがですか?」
「おお、流石、俺の嫁!気が利くな!」
「嫁じゃありません!」
蘇芳さんは晋作のいつもの言動に苦笑いをしつつ、それぞれの前に干菓子とお茶を置いてくれた。
静かに湯気の立つ湯のみを持ち上げるとふと視線を感じ、そちらに目を向けると蘇芳さんと目があった。
「ん?どうかしたかい?」
「い、いえ、なんとなく桂さんが疲れているみたいだったから。外から戻られてそのまま会合だったから余計かな?」
「いや、大丈夫だよ。最近誰かさんのせいで少し書き物が多くて肩がこっているだけだから」
ちらりとその原因に目をやればそ知らぬ顔で干菓子を品定めしていた。
「肩こりですか?…あ!そういえば私いいものもってるんです!」
「いいもの!!!いいものとは何だ!!」
ついさっきまでそ知らぬ顔をして干菓子を頬張っていた晋作が気づけば蘇芳さんの正面に居た。
「わわ、びっくりした!!」
「晋作、蘇芳さんをそんなに驚かしてはだめだよ」
「気にするな!小五郎!ところでいいものとはなんだ!?」
「あ、お灸です♪」
「おお!未来の灸か!」
「未来の…ですけど多分そんなにここのお灸と変わりませんよ?お灸に火をつけるだけですから」
「なんだ…つまらん。それなら小五郎がしてもらえ」
一気に興味を失った晋作はまたお茶と干菓子に興味を戻した。
「それはありがたいけどなぜ君はそんなものをもっているのかい?医術の心得でもあるのかな?」
「え?いや、合宿の罰ゲーム…じゃなくて合宿で使う予定だったんです!」
「………」
(今、言い直したけど罰と言ったな…)
じぃっと彼女を見つめると、少し慌てた表情をしつつも
「大丈夫です!私に任せてください!」
と胸を張った。
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