分け合う
「う…ん…」
手足の指先の冷たさで深夜、目が覚めた。
京都は寒いと元に居た時代でも聞いていたが、ここではその寒さを身をもって実感をしていた。
耳を澄ますとしんしんと雪が落ちてきている音が聞こえてくる。
(寒いなぁ。。。こっちは暖房器具も限られてるし、温かいインナーとかないもんなぁ。末端冷え性の自分の身体が恨めしいよ。)
布団の中にいても冬になるとどうしても熱が奪われてしまう。
冷えた指を顔を包む様に両手をもってきて、はぁっと小さく息を吹きかけ、足の指の方はどうだろうと足の指を動かしてみると感覚がほとんどなかった。
思わず身じろぎをすると、隣に寝ている小五郎さんに振動も伝わったのか顔を私の方に向けてうっすらと目を開けた。
「ん…蘇芳?」
(うあ、色っぽい…じゃなくて!)
「ご、ごめんなさい。起こしちゃいましたか?」
「気にしなくても大丈夫だよ。私はもともと眠りが浅いんだ」
「でも、せっかく寝てたのにごめんなさい」
「それよりどうしたんだい?嫌な夢でも見た?」
「いえ、手足が冷えちゃって目が覚めちゃったんです」
「手?」
少し眉間にしわを寄せて「それなら、手を貸してみて」と私の手を捜して布団の中を小五郎さんの手が動いた。
「え、冷たいからダメですよ」
断りをいれるも、小五郎さんはこちらに身体を向けて大きな両手で包み込んでくれた。
人肌の温もりが掌から私の指にじわじわと伝わってくる。
(あ、あったか〜い)
「これは確かに冷たくて寝れないね」
「末端冷え性だから仕方ないんですよ。もう大丈夫ですから。」
「末端冷え?ふむ、冷たくなるのはここだけ?」
「手足の指が一番冷たくなるんですよ」
「足の指か…」
少し何か考えるように宙に目をやった小五郎さんは視線を私に戻すとにっこりと笑って、「もうちょっとこちらにおいで」と肩を抱き寄せてくれた。
「足の方が冷たいんだろう?私の足にくっつけてみて」
「え!ダメですよ。凄く冷たいんですから!」
「いいから。間に挟んであげよう」
「…はい」
静かな、でも反論を許さない口調に言われるままに小五郎さんの足に自分の足を恐る恐るくっつけると、小五郎さんはびくりと足を震わせた。
「ほら。冷たいでしょ」
すっと足を離そうとすると小五郎さんがそれを制し、
「このまま寝たらきっとよく眠れるよ」
すっと前髪から後頭部にかけて、優しく撫でられ続け、挟まれた足と抱きしめられている箇所から伝わる小五郎さんの温かさであっという間に睡魔が襲ってきた。
「おやすみ、蘇芳」
重たくなった瞼の向こうから、優しい声が聞こえたような気がしたけど、おやすみなさいは言えなかった。
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