口は災いの元
「小娘、それはどういうことだ?確かに桂くんの色気は小娘と比べるまでもないくらいだが、嫁は女子に決まっておろう。」
「蘇芳さん…私が子を…しかも大久保さんの子をという話なのかな」
(これって冷気?殺気?二人とも笑ってるのに笑ってない!!!)
「いや…そういうわけじゃなく、多分ものの例えだと思うんですが…」
取り繕うようにへへと笑うが、二人は再び黒味を帯びた笑顔を返してくれる。
「だって…桂さんがこの前、世の中の人にどういう風に知られてるか知りたいような話をしてたから…」
語尾がどんどん小さくなっていく私を庇うように高杉さんが言葉を遮った。
「蘇芳が一生懸命思い出したのにそんな恐ろしい顔をするな!小五郎。
二人がそういう風に伝えられるような関係にあったってことじゃないか?」
「「そんなわけない!」」
「ほら、息もぴったりじゃ」
なおもケラケラと笑い続ける龍馬さんと高杉さんともはや苦笑いになってきた他の面々。
「蘇芳さん、確かに私は先日そのような話をしたけれど、そんな与太話を聞きたかったわけじゃないんだよ」
「おい、小娘。そんなおかしな事を二度と言わないよう、薩摩藩邸で充分教育してやろう。このまま着いて来い。」
「え、いや…」助けを求めるように龍馬さんと高杉さんの方を見るが相変わらずゲラゲラと笑っていて気付いてくれない。
「大久保さん、蘇芳さんは寺田屋に逗留中だから、その件は坂本君たちと話し合ってください。その間に蘇芳さんはちょっとこちらの部屋に」
桂さんが冷たい微笑を浮かべ、手招きをする。
「小五郎!抜け駆けか!」
「晋作も一緒に聞きたいなら構わないよ?」
冷たい笑顔が高杉さんにも向けられると、
「う…いや、蘇芳頑張って来いよ!!!なんなら、遅くなって藩邸に泊まっていけ」とにこやかに手を振った。
(ええええ、高杉さん助けてくれないの?)
「では、私はその間に土佐の連中に話をつけるか」
(ええええ、私の意志は〜?????)
(悪気はなかったんだけどなぁ…
口は災いの元なのかも…)
[ 59/136 ][*prev] [next#]
[top]