………とは言ったものの、どうするべきか。
好き、と伝えるだけなら簡単だが、それを聞いた新八はどうするだろう。
拒絶、嫌悪、…嫌な言葉ばかりが頭に過る。
この想いを伝えたらあいつはもう今までみたいな笑顔で俺に笑いかけてくれなくなるのか。
かといってこの想いを伝えずにあいつに嘘をつき続ける、というのもあいつに一番失礼だ。
そんなことをぐるぐると思い、終止符をうつだなんて考えてから2週間ほどあっという間に過ぎた。
いつものように適当に女を抱いた放課後。
廊下を歩いていると、窓から学校の正門辺りに一人で帰ろうとしている新八を見かけた。
…へぇ、今日はあの女は一緒じゃねぇのな。
一人、学校から出て行く新八の背中を見つめ、自分の馬鹿らしさに笑えた。
結局俺は自分が可愛いだけなのか。
新八が自分から離れて行くことに怯えて逃げて。
自己嫌悪していた中、耳に聞こえる耳障りな甲高い女の笑い声。
声のする方を見ると、たまに女を抱くのに使う空き教室。
笑い声と共に喋り声等も聞こえる。
女達が何人かで喋っているのか、そう思い特に気にも止めず歩き出そうとしたときに聞こえた言葉に驚いた。
「まじあの眼鏡くんあり得ないんだけどー!今時あんな絵に描くような純情な子いるんだねー!まじウケるっ!」
…………は?
直ぐに頭に浮かんだのは新八の顔。
そして、能能考えてみると、なんとなくこの声には聞き覚えのあるような気がした。
少し空いた教室の戸から中を覗く。
ここから見えるのは2人の見覚えのない女。
でも、その2人以外にも声がある。
角度を変えて見てみようと思い、少し角度を変えて見てみてかなり驚愕した。
最初に見えた2人以外にもう1人いて、そいつがあの言葉を発した奴だとわかる。
そして、一番驚いたのは、そいつが新八があれほど大事にしていた彼女だったということ。
「あいつ勉強できないわけでもないのに馬鹿なんだもんっ!ほんっと馬鹿!全然自分が騙されてる事に気付かないのあいつっ!普通に考えて私みたいな人があんな眼鏡と付き合うわけないじゃんっ!」
こいつ、新八のこと騙してたのか……?
でも、なんで………。
「あいつ人を疑うとか全くしないのっ!私のお母さんが難病で入院してて金が無くて困ってるって言ったら、結構な金くれてさー!私のお母さんなんてとっくの昔に男連れて出ていったっつの!」
「きゃはははっ!あんた相当性格悪ーっ!ってかあの眼鏡くん意外に金持ってんだー!」
「なんかさー、何年か前に両親事故で死んで、保険金とかで結構金入ったらしくてっ!でさ、あいつ私に金渡すとき『僕みたいに悲しい思いしてほしくないから…』って泣きながら渡したのっ!」
「「ウケるーっ!」」
そういう事かよ。
んな理由で新八を……
思いっきり女達を殴りたい衝動に駆られたが、男の立場上女なんて殴れる訳がない。
でも、せめて金を取り返すくらいならば許されるだろう。
あいつの家だって別に裕福ではない。
こんなの、
…許されねえよ。
ドアに手を掛けた。
開けようと思った瞬間、反対の手が引っ張られる感触。
そこには、泣きそうな顔で俺の手を掴む新八がいた。
3につづく。