金がなくて、
糖分が足りなくて、
雨で偏頭痛が起きていて、



イライラしてた。





馬鹿な俺は次から次へと自分の口から出ていく言葉を押さえることが出来ず、沢山、沢山、最低なことを口走り、顔を上げたときに見たのは、



アイツの傷付いた泣きそうな顔。

















「銀ちゃん。新八今日も来ないアルか。」



「……。」



悪かった。
ごめん。

この二言、言えたらどれだけ楽だろう。



悪いことをした自覚はある。
謝らなければいけないと分かってもいる。
でもなかなか行動に移すことができない。




『最低!銀さんなんて大っ嫌い!もう知りません!』



頭の中をぐるぐると、アイツが吐き捨てていった言葉が駆け巡る。



『あー…もー…うるせーよ。ここは俺ん家だろぉがよ。散らかそうと何しようとおめぇには関係ねーだろ。もーいいから今日は帰れ。ギャーギャーうるさい。』



それと同時に自分の言った言葉も。

新八がどたどたと出ていって初めて自分が最低な事を言い放ったのに気づいた。
馬鹿だ。
俺は本当に馬鹿だ。





「はぁー…知らないアルよ。きっと新八今頃家で泣いてるネ。ワタシ本当に知らないヨー。」



ぴちゃん、ぴちゃん、と微かな水音が台所から聞こえる。



水道、ちゃんと止まってねぇな。



「どこいくネ。やっと新八のとこ行く気になったアルか。」



「ちげーよ。水道止めに行くだけ。」



はぁぁぁと深い溜め息が背後から聞こえる。

行かなきゃ行けないのは俺だってわかってるっつーの。





案の定水道からは水が滴り落ちていた。
何故かその落ちていく水が新八の涙に見えて、蛇口を掴んだままの手を動かすことが出来ない。
そこで思い出すのは先程の神楽の言葉。



『きっと新八今頃家で泣いてるネ。』



確かに、そうだろう。
アイツは男のくせして泣き虫だからきっと今も泣いてるはずだ。



きゅっ、と独特の音を出す蛇口を捻り水道を止める。



そういえば今まで水道からこうして水が落ちていた事がない。

新八がきちんと止めていたからだ。

自分の家でもないのに水道代が高くなると言っていつもケチケチしていた新八を思い出す。



「新八………」



気づいた時、足は居間ではなく玄関に向かっていた。



2へ続く。




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