3Z
月曜日六時限目、銀魂高校のLHRの時間だ。
いつもクラスメイトに華麗にツッコミをする3Z唯一のまともな人間、志村新八が珍しく夢の世界へと旅立っていた。
月曜日六時限目
新八が珍しく夢の世界へと旅立っている原因を作ったのは自分以外の何者でもない。
昨日、俺の家に新八が遊びに来た。
空が明るい内はご飯を作ってもらったり、掃除をしてもらったり、他愛もない話をしたり、のんびりと時間を過ごしていたのだが、空が完璧に暗くなった頃、俺たちは裸になって人様に言えないような事をしていた。
寝たのは朝方で、新八も俺も寝不足だ。
このまま寝かしてやりたいのは山々だが、今日のLHRは掃除当番の割り振りを決めるという生徒達にとって出来るだけ楽な所を選ぶぞと必死になる決死の戦いなのだ。
だから今日は珍しく、愛用のアイマスクで夢の世界へ旅立ちっぱなしの少年も、早弁をして周りにタコさんウインナーをこれ見よがしに自慢する少女も、愛しの女性に授業中だとも関わらず愛を囁くオッサンも、教科書に求人雑誌を挟んで真剣に就職を考えているまるでダメなオッサンも、皆きっちり背筋を正して座っているのだ。
この調子でいくと、掃除当番を決めるだけで教室は戦場と化すだろう。
なのでクラス唯一のまともな人間が寝ているとなると、困るのだ。
生徒達は、珍しく寝ているからか全員の視線は新八に注がれている。
「オイコラ、天パ。新八起こせヨ。」
「ツッコミいないとこのクラス大変な事になりますぜィ。」
やっぱり可哀想だが起こすしかねーのな、なんて思うのと同時に『駄目だって、新八は昨夜の俺との愛の営みのせいで疲れてんの。』とかとクラス全員の前で言えたならいいのになぁ、なんて本当に言ってしまったら通報され、『え、お前らってそういう関係?』等という目で見られるのが間違えないような事を思う。
「おい、志村起きろ。」
ゆさゆさと教卓から一番近い席に座る愛しい生徒の肩を揺する。
「んー……」
お、起きたか?
「ほら、起きろ志村。ツッコミいねーと困るんだって。」
「んー………
なんれすか、せんせー…」
うお!寝ぼけて呂律廻ってねぇ!かわいーなオイ。
「起きろ起きろって……」
目が開いてねーぞ志村くん。
「よる………」
夜?
「ぼくがやめてっていってもせんせーがずっとえっちなことやめてくれなかったから、ねむいんじゃないれすか。」
………は?
「こしだってまだいたいし、ぼくつかれてるのに、がんばってがっこうきてるんれすから、いちじかんぐらい、ねさせてくらさいよ…。」
ちょっと待てェェェ!新八ィィィ!
「ちょ!オイ!志村!」
一人として喋ったりしていなかった教室で、新八の声は多分全員に聞こえただろう。
「うー…、なんれすか。がっこうでだけしむらって……。いつもふたりであうときみたいにしんぱちってよんでくらさいよ。」
はァァァ!?なに言っちゃってんの新八くぅぅん!?
やばいよ!俺!
「志村!ちょ、オイ!」
そんな俺の制止も虚しく新八は再び夢の世界へと旅立っていた。
クラス全員の痛い視線が自分に刺さる。
愛しの生徒の姉から鉄拳が飛んでくるまで五秒前。