その、空間だけで何不自由無く暮らせそうな大きな玄関に靴を脱ぎ、綺麗なフローリングに上がる。
「…お、おじゃまします……。」
緊張で震える声しか出なくって恥ずかしくなり、更に顔が赤くなったのが自分でもわかった。
「いや、おじゃましますって今日から此処、お前ん家だからね。」
「あ。」
そっか。そうだ。
頭の中がテンパって一瞬この家が今日から我が家になることを忘れていた。
うぅ、恥ずかしい。
「此処がリビングね、あっちが台所、で、あそこのテーブルが飯食う用。あの階段上がったところに見えるのがお前の部屋で、その隣が俺の部屋。三階に上がったところに有るのが親父の寝室、その隣が親父の書斎。で、もう少し進んだ所にベランダがあるから洗濯物はそこに干して。二階のベランダは洗濯物が外から見えるから使うなよ。で、四階の右側が映画上映室で、左側がDVD、CDの保管部屋兼資料室。あと、反対側の二階の二部屋が客間で、三階は全部空部屋、四階は右側がゲームルームで左側がパソコンルーム。で、こっからは見えねーけど五階がプール、とプラネタリウム。階は五階までだ。あと、そこのドアの向こうが洗面所、便所、風呂、サウナ。で、そっちのドアの向こうが本格料理室、パンとかピザとか作れるぞ。で地下にトレーニングルームとカラオケルームと倉庫がある。」
…………は?
「…え、いや…あの……」
「あと、お前、家事全般できるんだろ?」
「…え…まぁ…ハイ。」
「じゃあ、これから毎日、掃除、洗濯、料理、頼むわ。」
「……へ……?」
いや、ちょっと待って、話についていけないんですが。
部屋数が半端ないんですけど。
え、今ので全部、覚えろと?
必要なさそうな部屋ばっかりだし。
最後のカラオケとトレーニングルームしか覚えてねーよ。
なんだよカラオケって。
なんで家にあんだよ。
「あと、これ。」
手渡されたのは茶封筒。
「何ですか、これ?」
開けて見るとそこには見たこともないような一万円札の束。
ざっと二、三十万というところだろうか。
「何ですかコレ!」
「飯代とか。必要な物買うのに使って。学校で必要な物買うのとか自分の小遣いとかもそっから使え。なくなった言ってくれればいいから。」
「…はい。」
「荷物はお前の部屋に届いてっから。じゃあ今から女来っから茶ぁ用意しといて。あ、部屋入って来るときはノックしろよ。」
そう言ってお兄さんは部屋に戻ろうとした。
あっ………名前!
「あ、あの!名前!」
「………あぁ、銀時。」
そう言ってお兄さんは部屋に戻ってしまった。
なんか、思ったよりも……。
もっと家、案内してもらったり、自己紹介したり……。
こんなに冷たくしなくてもいいんじゃないか。
少し、寂しかった。
続く。
ハイ。また微妙な感じで終わって続きます。