※ 綱海と佐久間と女子マネ
※ 3期(本選)・トンデモ設定
※ ばかくだらない



居ないので探した。見つけたので声をかけた。しゃがんでいたので心配になった。睨まれたので隣に座った。
「怒ってる?」
「……ぜんぜん」
「…腹、痛いのか」
「…………ぜんぜん…」



乙女の構造
【Maiden's structure】



佐久間は女の子なんだけど、中学男子サッカーの頂点の大会に選抜された。女の子なんだけど。
「顔色悪い」
「………」
「立てないならおぶるぜ?」
「………平気だし…」
これは相当、辛そうだ。
どんな理由があって女子が男子と張り合おうというのか。性別を隠すなんてドラマやマンガなんかでしか見たことがない。実物に会おうとは。結構数奇。
「誰か呼ぶか?」
言って、頭に手を乗せる。猫っ毛がさらさらしてきもちいい。しかし汗ばんでいる。
「…なぁ、それ、……冷や汗?」
「……ぅ…」
頭に乗せていた手を下ろして肩に置くとひやりと冷えた体にぞっとする。この猛暑の南国の昼間にこの体温は無い。
「佐久間お前やべぇぞ。ちょっとやばいこれ。この冷たさは」
「ぅ、……ぅー…」
さっきから呻いてるだけで返事しないしこいつ。
おそるおそる背中に手を移してさすってやる。汗で張り付いた練習着には胸を潰すサポーターの線がくっきりと出ている。
これのせい…かな。それにしては腹を押さえているし…
「…あ、もしかしてあれか」
「……、…」
「生理」
その単語を口にした途端びくっと体を震わせる。しかし何を言うわけでもなく相変わらずうーうー唸っている。こんなにしんどいものだとは…これが毎月なんて少し同情する。
「…うーんと」
「………」
「とにかく腹をあっためるといいんだっけか」
「………」
「…さすがにわかんねえな。生理のことは」
綱海はぐっと体を密着させると膝を抱え込んでいるその腿と腹の間に、抱きかかえるようにして手を差し込んだ。あ、しまった嫌がるか。すぐに思ったが佐久間なら、一瞬体を固くさせただけで抵抗はない。
「……痛い?」
細身だが、なるほど女の子の身体だと思う。柔らかい腹とか、手の甲にあたる腿の肉はふくふくとして手触りがいい。
「……いだぃ……」

…もしかして泣いてる?


練習はとっくに始まっているし音も声も聞こえている。練習大好きの佐久間がその根性を持ってしても立ち上がれもしないのだから大変なことなのだろう。
「……ちょっと楽」
「ん?何」
「…つなみの、手……手があ、ると、ちょっと…楽…」
息切れするくらいの痛みって大丈夫なのか?
病気じゃないってことぐらいは知識あるけど、こんなに辛いものだとは知らなかった。でも確かに体育とか休んでる女子居る。保健室とか行く女子も居る。うわオレ男で良かった…

「あっいた!」
「音無」
ここは寄宿舎の影で、壁に背を預けて小さくしゃがみこんでいた2人を発見した音無は発見よりは驚愕に近い声を上げた。
「冬香さん!いましたよ」
練習に来ない佐久間を呼んでくると言って練習場を出て来た綱海だったが、この状態に離れるわけも行かず随分こうしていた。とうとうマネージャーたちが探しに来たのだと思ったら、綱海には用がないような様子である。
「ええぇ?大丈夫ですか佐久間さん真っ青!」
「大変…もしかして重いの?薬持ってくる?」
佐久間は全く反応しない。普段こんな態度をとることはまずない。やはり相当らしい。
「……いつもは…軽いんだけど」
やっと小さな声で返事が繰り出される。しかし無理するなと言いたくなるほど弱った声だ。
「え、じゃあ何ででしょう…環境がかわったせいとか?」
「わからない……」
「困ったね…」
またぅーぅーと唸ったりぜいぜい息を切らしたり。しゃがみこむマネージャーと顔を見合せため息をつく。しかし、マネージャーはさすがに知っていたのか。いや、もしかしてバレた、のかな。

腹に当てた手が少し温かくなってきた気がする。冷や汗が引いてきたのかなと佐久間の様子を伺っていると、久遠が急に不審気に綱海の顔をまじまじと見た。

「綱海君は何を…どこを」

やっぱりまずいか。嫌がってないからいいかなと思ってたけど。
「えぇっ?!ちょっとそれはどうなんでしょう?!」
「だめかこれ。あっためようと思ってさあ」
「佐久間さんいいんですか?!」
音無…少し声がでかい。ばれたらことだぞ…
肝心の佐久間はまだ項垂れていて動かない。確か腹だけじゃなくて腰とか頭とかも痛くなるって聞いたことがある。踏んだり蹴ったりだな生理ってやつは。
「綱海さん…もし佐久間さんが動けないのをいいことにそうしてるなら…」
「ぅえ?」
「この音無許しませんよ…」
腹触られるってのは女子にとってそんなに大変なことなのか?でも確かにこの中身は神秘的だよな。気軽に触って悪かったのか。
「佐久間君、いいのこの状態」
「………なに…?」
「綱海君の手、いいの。お腹」
佐久間は少しだけ顔を上げた。
「ぃ…」
「…いい?」
「ん……」
佐久間を覗き込んでいた久遠はぱっと顔を上げて綱海を見ると、すぐに音無と顔を見合せた。
「……もしかして…」
久遠と顔を見合せていた音無はそれだけ呟くと今度は綱海にばっと向く。
「……お二人はまさか」
女の子ってこうだよな…
「…ぉぉお付き合いされてい、る……?」
「…綱海君、そうなの?」
疑う要素が1%でもあれば=付き合っているこの方程式。
「いや…」
「えっでもこの状況どう見ても怪しいっていうかビンゴですよ?!」
「いやいや…」
「そもそもそういえば、何で綱海君は知ってるのかな」
「ああ…それは」
綱海はマネージャーたちより先に佐久間の性別を知っていた。平然と質問に答えようとすると今の今まで指も動かせぬという状態に見えた佐久間が腹に当てられた綱海の手の甲を軽くつねった。
「いたっ…なに?」
「………」
「えっ、どうしました?」
「いやなんか…つねられた」
「…言うつもりかよ…お前…」
どすの利いた声が痛みに唸る女の子の腹の底から響いてきた。
「なんで?言ったらまずい?」
「もしや恥ずかしい話ですか?それは是非聞きたいですね…」
「春奈ちゃん……」
「実はパンツ見ちゃって」
制止があったのにも関わらず綱海はあっさり言ってしまった。咄嗟にマネージャー2人は佐久間を見たが、真っ赤になって黙り込んでいるのを見たら多少良心が痛んだ。弱っている人にさらに攻撃してしまった気分だ。
「…パンツ…ですか」
「丁度着替えてる所にさぁ、オレがばーんと入ってっちゃって、上は着てたけど下パンツで」
「綱海君…」
「白だったぜ」
偉業のように言われて唖然となるマネージャー2人。得意気に親指まで立てている綱海。
「いいもん見た」
「………」
「すぐ女の子だったんだって思ったけど、もしやそういう趣味がある男子、とも思って」
「それ以上言ったら蹴る」
しんどそうに震えながら顔を上げた佐久間の顔はやはり真っ赤で、目には涙が浮かんでいた。
痛くてたまらないのにこんな…情けなくて恥ずかしくて…
「わはは!泣いてる!」
「何がおかしいんだよ!本当に痛いんだぞ!」
「いやぁいじめたから泣いたのかと思って」
「自覚あったのかよ…ひ、ひど…ひどいお前……」
「あれっ……佐久間?」
佐久間は再び頭を膝につけて、なにやらめそめそと泣いているような音がする。そういや精神的に不安定になることもあるとも…聞いたことがあるな。

「…じゃあ綱海君にまかせちゃおっか」
「あっ、そうですね!」
「えっ嘘…オレよくわかんないんだけど…」
「大丈夫そうだからよろしくね」
「嘘、マジ?」
「皆さんにはちゃんと伝えておきますから!」
「ちょ…え?本当に?」

母性を発揮し心配したり、恋愛模様を期待したり、ずばりと疑問を投げ掛けたり、あっさり行ってしまったり。女の子って不思議だ。
「づなみ…」
「はい…大丈夫かほんとに…」
「………ぃだい…」
でもどんな女の子よりこいつが一番理解できない。
立ち居振舞いは完璧に男だ。プレーだって勇ましいし言葉遣いは乱暴だし、でも今女の子の証である月一ものに苦しんでる。なんだこいつ…
「……よしよし」
「……なに、それ」
「可愛がってるんだろ」
「…………」
まぁでもどんな女の子より可愛いよ。




2011.04.07







***
女は生まれながらにおばちゃん気質を備えていると思う。綱佐久でも綱→佐久でもない。
模範回答:にいにとにいににだけ妹気質のサクマチャン。
だらだら長くてすみません。生理に怖じ気づかないにいにとにいににお腹抱えられるサクマチャンかきたかっただけだッツ



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