※ 不佐久(チャラッキーナ注意)
※ 年齢操作・一人称・ばか注意
※ うる☆やつら(ルーミック)パロディ



存在自体疑わしい。頭のいかれた女じゃないかと思っていた。もしくは俺の頭がいかれたか。
でなきゃ説明なんかつかない。あんな女。





「今日もだめなのか」
「いい日なんか来ねえよ。いい加減諦めな」
アホ女、と寝床に転がる。怒声が飛ぶと思われたが、アホってなんだ?と酔狂な返事。
「はぁ?」
「知らない言葉だもん」
「ああ…そう…」
「ねえなんでだめだ?」
上からひょいと覗きこまれて、居心地が悪い。
「だめだから」
「またそれか。おしえてよ」

この女に何を禁じているかというと、一緒に寝ること。つまり添い寝だ。
同い年か、もしくはもっと若いかもしれない。素振りが幼いので判断は出来ないがとにかく何が気になろうが絶対に質問なんかしたくない。そんなことをしよう物なら興味を持たれたと勘違いを起こされ喜ばれ、今より更に面倒な事になるだろう。

このいかれた女は俺に惚れてる。

「へぇーお前の星じゃ惚れた相手を困らせてもいいんだなぁ」
「………けち」
「ははっ、その代わりいいこと教えてやるよ」
なに?と目を輝かせてベッドの横に正座する。
「“アホ”ってな、“可愛い”って意味なんだよ」


この女、いや、女の子。
結婚してあげるとか言って突然現れて押し掛けて来た危ない女なのだが、困ったことに可愛い。
容姿は見たことが無いくらいと言ってもいい。どんなに可愛いと言われる芸能人やモデルだって、たぶんこんなには可愛くない。
目が大きくて少しつり目。睫毛が長くてまばたきさえも愛らしく見える。形の良い鼻や眉。ぷくりと腫れた綺麗な唇。非の打ち所が無い。笑うとほんの少し八重歯が見えるのも魅力に思う。

ただし頭がおかしい。

そうなればご破算。長所は全ておじゃんである。
例え言動が幼いくせに胸が大きくて脚の形が可愛らしくて、適度に肉がついていて肌が綺麗で髪も柔らかくて発光しているようで、
良い匂いがして笑顔がたまらなく愛らしくて無邪気で健気で最高に想われてても、

いかれた女はお断りだ。

自分は宇宙人で遠い星から貴方と結婚してあげるために来ました。さぁ結婚しましょう。なんて言うのだから。
「じゃあ可愛いって言ってくれたってこと?」
「ああそうそう」
「ほ、本当?!…やった……」
両手で小さなガッツポーズを作って真っ赤になっている。くそ。可愛い。
「…じゃあ寝るから。邪魔すんな消えろ」
「うん!また明日。おやすみ!」
…えらく上機嫌になりやがって…
毎夜、宇宙船で眠ると言って部屋を出ていく。



彼女が現れてから不動の暮らしは一変した。恋人には誤解を受けて振られるし寮監にはこってりと叱られた後彼女を寮に置く条件として毎週共同風呂を掃除させられている。
つまり学校には大々的にばれているのだが、咎められてもこの宇宙人とやらを追い出してくれる筈だった頼みの綱が寛容してしまったのだ。彼女は時々学校にもついてくる。
必然的に1人の時間が減って自由が無くなり、学校の課題を片付けそびれたり、交際に発展しそうだった女の子との仲も上手く取り持てず逃した。その上彼女は不動と結婚すると触れ回っているので“不動の恋人”として有名で、以降女子との出会いはほとんどが挫かれている。
可愛いがゆえにファンも味方も多くひがまれながも浮気(ではないのだが)などしようものならクラスメイトやら寮生から制裁をくらう。ここは男子校だから唯一の華となっているし、あまり邪険に出来ない現状。
被害は地味だが確実だ。

諦めてさっさと星とやらに帰って欲しいのだが、なまじいかれてるだけに下手にできない。逆上されたら何をしでかすかわからない。
無害に見えるが本当に本当に宇宙人だと言い張るのだからまともではないのだ。
しかし可愛いからずるい。強く出られないのは可愛いせいもある。



「起きろ!」
「……なに…?休みだから…」
「デートに行くって約束した!」
しつこく機会を狙っては約束をかすめとるのでこれは嘘じゃない。妄想でもない。先日つい、はいはいわかった、と言ってしまった不動のミスだ。
「…家でデートしよう。昼寝デート。な」
「いやっ」
普段従順で素直なくせに…
煩わしく思って上体を起こすと宇宙人は誰から借りたのか観光情報誌を持っていた。開いているのはこの辺では有名な水族館の紹介ページ。
「なに?それ…」
「サカナ?」
「……魚見たいのお前…」
「に、ん、き、の…デート…すぽっ…と…」
文字はまだあまり早く読めないらしい。勉強中とか言ってた気がする。
「だからここ行きたい」
「パス」
「なんでっ」
「……めんどくさい…」
休日に外出なんて最低。人の多い所なんかさらにナンセンス。しかもこの危ない女と2人。悪夢だ。
「約束したのに……」
「……ハァ……」

結局俺もお人好しだ。


宇宙人は初めて見たあらゆることにおおはしゃぎ。
あれ何、これ何の嵐。腕をがっちりと組まれているから逃れられない。その状態できゃあきゃあと跳び跳ねてみたり目を引いたものに思い切り走り寄ったりするものだから、まさに“振り回される”に相応しい。
「……痛い」
「……!…あっ……」
一度だけ小さく訴えると途端にしょんぼりと小さくなってぱっと腕を解いた。
「……ごめんなさい…」
「…いや…怒ってるわけじゃないけど」
すると申し訳なさそうにしながらも、嬉しそうに笑って頬を赤くした。

こいつは俺の何がよくて、好きでいるのだろう…

いつもは不動が小さくなって着られなくなった古い部屋着やジャージを着ていて、今日のように可愛らしい、女の子らしい服装は初めて見た。
もっとも、初対面には下着同然の格好だったが、普通“地球の女の子”はそんな格好で出歩かないと教えてから服を着ることを覚えたようだ。ファッション誌などを広げている場も何回か見かけた。
『どういうのがすき?』
『…なにが』
『ふどうはどういう服を着ている女の子がすき』
『どうでもいい』
『じゃあこれとこれなら?』
『……こっち?』
『わかった』
そういえばそんな問答を何回かやり取りした。勉強したのかかなり…完成度は高く思う。女の子のファッションはよくわからないが、複雑らしい。けどこれは、かなり…

「楽しいなあ水族館」
「…おめーの星にはないか」
「無いよ。まずね、サカナがいないからね。あれはサカナ?」
「あれはイルカ」
「へえーイルカはアホだなあ」
「!ぶはっ!あはは!」
「…?な、なんだ…?なにかたのしいか?」

はた迷惑な女だけど、嫌いなわけじゃないんだ。

それが困る。





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