※ リクエスト源佐久



(もうちょっとかわいくできないんだろうか!)
恥と自己嫌悪と怒りと後悔となにやらかにやら佐久間はなんとも収拾のつかない気持ちでともかく顔があつい。
(かわいくないかわいくない!なんてひどい!)
絶対に恋人にあきれられた!
と、苦しんでいるところだ。
というのも今交際している相手は初めての恋人で、当然恋人同士の…それらもすべて初めてなのだが、佐久間はつい先日この恋人の前で、耐えきれぬ醜態をさらした。
本人がそう思っているだけで実際のところ、当の恋人がその“醜態”をどう思ってるのかはわからない。
でも“絶対に”嫌われた、あきれられたと悩むのが女の子といういきものである。
(あんな、無様な、恥ずかしい、はしたない)
簡潔にいうと恋人が佐久間と性交渉に及ぼうとした際佐久間はわけがわからず突然の事に叫んで逃げた。近場にあった枕で恋人をたたくように押し退け、自宅まで走った。

『佐久間、佐久間!ごめん!』

振り返らなかったが、恋人は確かにそう言った。
「馬鹿だなアンタ」
「うう…ゴメンナサイ…」
「あたしに謝ってどうすんの。ばっかじゃない。訊かなくても馬鹿ね。ばぁか」
「忍ちゃんヒドイ…」
冷静さを取り戻すほど、比例して恥ずかしさが募る。
普段、かわいくてたまらない女の子をを真綿にくるんで愛でているというような男が佐久間の恋人なのだが、それでも男だから、あわやと思う事もあるだろう。
別に佐久間も嫌というわけではなかった。恐怖というよりただ突然で驚いてしまって、恥ずかしくなって逃げたのだが、なにせこの娘はとんでもなくうぶなのだった。友人の忍はそれに毎回あきれている。
「かわいそー源田」
「ホントだよねー…まじごめん源田…」
「かわいそー源田」
「ハイまったくです…」
「でも佐久間カワイイ」
「……」
佐久間を客観的に見れば確かに忍の言う通り、カワイイ。
変わった髪の色をしているし、普段から片目を隠しているが、目玉一個で魅力的。人によって印象は違うのだが、綺麗とか可愛いとか大抵がまず称賛である。
さらに体は細く、随所が程よくふくよかである。すらりとしながらしなやかな体型は多くの女子には憧れであろう。
「むしろさぁ今までよく黙ってたよ源田は。インポかと思ってた」
「?」
「アンタ、否定するだろうけど体エロいし顔カワイイし。あたしだったらすぐ食べちゃう」
「ちょっと待って。もうちょい分かりやすく言ってください」
「大丈夫だからとっととヤっちゃえっつってんだよ」
「忍ちゃん声大きいよ!」



佐久間はその日源田の家をたずねた。
恥ずかしくて、もうたまらなかったが、完全に嫌われたかもしれないが、謝ろうと思い1日かけて覚悟を決めた。
この家の前に来ると思い出す、自分の品の無い絶叫とみっともない抵抗と心無い逃亡。
「ああ……」
ため息。こんな恋人もういらないと言われるかもしれない。でも謝りたい。震えそうな指で呼鈴を押す!
『次子…』
「あっ、あの、入ってもいい」
『いいよ。ごめん。俺から行こうと思ってたのに』
鍵は開いていた。勝手知ったるで奥へ進むと、源田はまだ制服のままで、勉強部屋で座っていた。でも何故かくつろいでいるようにはまるで見えない。
佐久間が部屋に入るなり、源田は座った姿勢から、そのままがばりと頭を下げた。
今この家は実家からの通学が不便な源田が家から出されて1人で暮らすアパートだが、源田の家は武士の家系らしい。それが今この瞬間ものすごく納得できた。
「すまん、佐久間!」
「え、ちょっと待てよ」
「了解もとらずに、俺は…」
「待って、待ってって。こっちだって謝りたくて来たのに」
「なんで佐久間が謝るんだ」
源田はようやく頭を上げた。佐久間は源田の正面に正座すると、見まねで手をつき頭を下げた。
「ごめんなさい」
「なんで!」
「だって、な、殴っちゃったし…まくらで…に、逃げたし」
思い出すだけで恥ずかしいうろたえ。恥で震えが来そうである。
「だって俺がいきなりで恐がらせたから…嫌だっただろ?びっくりしたよな」
「嫌じゃないよ。びっくりはしたけど」
「嫌じゃない…?!」
「嫌じゃないよ」
これでどれだけ源田が救われたのか、佐久間はこの先もわからないだろう。
手を出した手前源田は佐久間以上に、嫌われたに違いない。別れを切り出されようと仕方ないくらいだと、悩んで悩んで落ち込んでいたのだ。
「じゃあ、触ってもいいのか」
「え、なんで訊くの?」
「佐久間、好きだよ!」
体格の良い源田にがばっと抱きつかれ、佐久間は後ろに倒れた。
「許してもらえるなんて…ありがとう佐久間、ありがとう」
「えーと…こちらこそ?」
「していい?」
「…はぁ?」
源田はむくりと起き上がり、佐久間を引っ張り起こす。それからもう一度訊いた。
「していいか?」
「一応訊くけど、なにを?」
「セックス」
「えっと…」
「俺今まで我慢しまくってたからいきなり襲ったりしたんだと思うんだよ。だから我慢しない方がたぶんいいんだ」
「…それ正しいの?」
「たぶん。俺には」
源田の大きな手が、佐久間の顔を撫で、首をなぞる。襟首に指が入り、下着の紐に触れた。
「私…」
「たのむ、佐久間。黙って」
ぐっと腰を抱き寄せられ、源田の膝にまたがる体勢になる。佐久間はとうとう震えていた。しがみついてくるので多少可哀想に思えたが、このまま強引にしてしまう方が、なんとなく2人には良い気がした。
やがて柔らかい胸を夢中で好きにしていると佐久間はいよいよ泣き出す。
「あっ、ごめ…痛かった?」
「うぅー……」
「なんだよ」
「恥ずかしい…」
「わかってるよ。我慢しろ」
「く、…鬼かお前…」
「あそこで逃げるお前もたいがいだぜ」
「意地が悪い」
「わかってる」
そう言って源田が微笑むと、なんだか急に恐さが薄れて、佐久間も笑った。
「ごめんな、可愛くない彼女で」
「こっちこそ、意地悪なやつでごめんな」






***

まーろ様からのリクエスト
『源佐久♀初えっち』でした。
してないね。朝チュン並だね。2年も前のリクエストなので今さら感。蹴らないつもりだろうが2年も経てば蹴ったに等しい。本当にすみませんでした。見てないだろうけど…(((⌒p⌒;)))私の罪悪感が表れたのか土下座のオンパレード…
リクエストありがとうございました。どうもすみませんでした。


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