※ 鬼道と佐久間(年齢操作)
※ 存外ファンタジック注意



鬼道の結婚は相手の姿を認める事なき伝統的な婚儀によるものだった。17の時10歳の嫁をもらい、そしてすぐ宗束修行にこもる。3年里を離れた。嫁の顔はいまだに見ていない。

「なんにも連絡とってないのか」
「顔も知らない相手に筆がすすむか。何を書けって」
「息災やら、近況やらを」
「お元気ですか。そうですか。ではお元気で。こうか?ん?」
「ばか、当たるなよ」
宗束修行というのは、ここいらの土地で信仰されている神仏の本山である山寺にこもり、精神を清め、鍛える修行の事である。各里の三等以上の家宅の男児は17になったら元服し、この修行に入る。
修行に入れる時期は季節の変わり目に限られており、17を迎え次の季節に移る前、各々徒歩やら馬やらで自力に寺までたどり着くこと。これがなかなかの酷な道のりだが成人した男子の伝統であるがため、期日までに到着できなかった者は一族の恥とまで考えられる。また、神々からのご利益が薄れ、災厄が家族や末代に祟るという。
鬼道の妻はその神仏を奉る一族の、最高位直系の末娘であった。
「なんだっけ。名前」
「さあ…知らん。神名もあるんだろうが、婚前名も聞いてない」
「おいおい、族長樣」
「仕方ないだろ。結婚なんてしたくなかったんだ」

帰宅のち、一応妻には無事に戻ったという内容の竹簡を送ったが、顔を見せに行く事もしていない。一族親類にはきちんと帰宅の挨拶をしました、と伝え、品行方正な鬼道を疑る者は居ないのでそれで済んでいた。それにあながち嘘でも無い。
等位の高い家の結婚では、妻は以後終生異性は夫にしか会わない。他に会える人間といえばカメと呼ばれる世話役(もともと女性しか就けない職である)と、薬師、機会があれば産婆くらい。それで離殿(奥方用の屋敷)に入る。陰気な風習である。

(毎日何してるんだか…)

鬼道はなるべく離殿を避けていたが月に数回は必ず前を通らなくてはいけない。そんな時は結婚式で御簾越しに見た静かな座姿の影を思い出し、あのままあの暗い色をした寒そうな屋敷でじっと黙っている細君の様子を想像した。憂鬱になる。
自分がために屋敷から出られないだろう身の上はわかっているが、しかし自分のせいではない。家の決定だがそれでも酷な状況に置かれる嫁を思うのは気分が悪い。そんな訳で鬼道はつくづくこの結婚を厄介に感じていた。




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