※ 不動と佐久間♀
※ 最低男と馬鹿女
※ 暗い。年齢操作他注意。B



呼べばやはり佐久間は来た。いつものファミレスで向かい合い安い飯を食っていたら、“丁度の女”が店に入って来て、まっすぐこの席に向かって来る。つけてきたか外から見えたか。予想を裏切らず佐久間に罵詈雑言を浴びせ始め、不動は黙って食事を続けた。
滑稽だ。
佐久間も黙って女を見ていた。そのうち女もしびれをきらし、なんとか言え、と締め括る。店員と客が身を乗り出している。佐久間は落ち着いて着席を促した。
「追加」
「どうぞ」
息巻く女をしかとして、余裕のある腹にもう一品注文する。その間佐久間はいつも以上に冷静に不動との関係を女に説明していた。
「電車で痴漢に遭っていたところを助けてくださったので、お礼に食事をご馳走させて頂いていたのです」
まるでそれだけだと言うようだ。事実そうだが、勿論なのだが、そうでは無い。
だが不動は今の状況をどう説明していいのかわからなかった。
意外にも納得したらしい女とアパートに帰る事になった。本当は佐久間と帰りたかった。あの綺麗な身体を抱くつもりだった。
夜中違和感が付きまとった。

それから1週間程経った夜、佐久間は初めて電話に出なかった。メールも返ってこなかった。女に遠慮しているのかと思い、返事をしろとメールにつけた。
それでも返ってこなかった。
そのまま季節が丸ごと過ぎて、電話はつながらなくなった。メールもエラーで返ってきた。案外女とは続いて居て、金蔓が無くても生活が苦しい事もなかった。
ただれていた関係が失せてすっきりと行かない疑問が残る。
ろくに発言も無い子供だったが強烈な美貌が不動を虜にしていたらしい。
たらふく食っている前で紅茶を一杯も飲みきらない。そういう子供。
携帯電話にストラップがひとつもない。財布も飾り気の無い革製のもの。少しだけ崩した制服の着方はむしろ彼女を優等生に見せた。
それを脱がして好きにする権利があるのが今更なんだか不思議に思えた。
表向きは優等生で裏では痴漢を追い払うのも堂に入ったものである。子供だが女だ。

電話が繋がらなくなって3週間が経過した。
女の鞄から液晶が砕けた佐久間の携帯電話が出てきたので、さも誰のだかわからないという態度で訊ねてみると、拾ったのだとしらばっくれた。向こうも誰の物だかわからないふりである。
佐久間の携帯電話にはストラップはついていない。しかし電池パックの蓋に小さなシールが貼ってある。どこかの水族館の記念品らしい。それだけが彼女に人らしさを感じるものだった。

学校の前で2日待ち伏せた。
佐久間は現れなかった。




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