照美が参加してしまったことで会議はにわかに効率を増した。
面倒を避けたい一心がまさに一丸となったのだ。会議は踊らず幕を閉じる。
「綱海寝てるぞ」
「わ、本当だ。気付かなかった」
わらわらと席を立つ中まだホワイトボードを見つめていた佐久間と、その佐久間に後ろから寄りかかったまま寝ている綱海。
「起きろよ」
不動がかなり強く綱海の頭をはたいたが綱海に起きる気配は無い。
「…まいったな」
「ここに転がしておきゃあいいだろ。立てよ佐久間。行こうぜ」
あからさまに冷たい態度。その真意を知る者や、気分を同じくする者にはそれを咎められないが、しかし佐久間はむっとした顔。
仲間意識の強い佐久間だ。不動の態度は釈然としないのだろう。何か不動に言おうと、口を開いたその時だった。
「ひでぇなぁ…」
「………」
「……え?」
むく、と綱海が顔をあげる。
「お前!起きてたのか…」
鬼道が呆れたように言う。
「さっき起きたんだよ。誰か頭たたいただろぉ〜」
はたかれた頭頂部を撫でながら、イテエとかヒデエとかぶつぶつ言っている。
「大丈夫か…?」
佐久間は体をひねって綱海の頭をなでだした。

…あ…佐久間それはマズイ…

風丸は数秒後には勃発する(めんどくさい)事態を正確に予想していた。
ドカッ!と派手に音をたてて不動が2人の隣に座る。
(うわやっぱり…)
するとその逆隣の椅子には静かに引いて、うるさく座る豪炎寺。
「佐久間ってばやさしい〜カーチャンみてえ…」
綱海は状況を知ってか知らずか佐久間の胴に腕をまわし、肩に顔をすりつけた。

「あいつら仲良しだなァ」
隣に立っていた円堂が笑う。これがそんな風に見えるのか…?
「そ、そ…そうか…な…」
とうとう鬼道までもがその向かい側に腰を下ろし、かたまっている2人の様子を凝視しだした(睨むとも言う)。
「!」
「……」
「……円堂?」
「いいじゃん。だめ?」
鬼道の気迫にこの事態をどうしたものかと一瞬気が遠くなったが、それを覚ましたのが再び円堂。
唐突に手を握られて、向こうは照れるどころか何でもないような態度だ。
円堂には触発されて積極性を見せる面がある。いつも唐突なそれに風丸はまいるものの、はねのけることは絶対に無い。
「だめじゃないけど、お前いつもいきなりだな…」
握り返すと円堂は笑った。

「おいチャラ男」
「それオレのこと?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
ところでテーブルではとうとう毎度のあれが始まる。
かまわないのが吉なのだが、早速佐久間が可哀想なことになっていた。
「お前馴れ馴れしいよな」
「ん?誰に?」
「佐久間にだよ」
「馴れ馴れしいって…
トモダチですし…」
簡単に説明すると、綱海は佐久間を気に入っていて、豪炎寺は佐久間が気になっていて、鬼道は佐久間を可愛がっていて、不動は佐久間を独占したい。
「まぁ、とりあえず綱海は佐久間から離れろ」
「うぁ源田戻ったんじゃなかったのか」
ちなみに源田は、まぁ…多分…
好きなんだろうな。

「なんか面白い状況だね。君たちこの頭のにぶーい佐久間が好きなの?」

繰り返すが照美はまさしくトラブルメーカー。迷惑がられるのを楽しんでいる節がある変人である。
悠々とベンチに腰掛けると自分のおかれている状況を把握できていなそうな佐久間を笑う。
「本当にわかってないの?それともかまととぶってるの?喧嘩をやめてぇ〜って?私のために争わないで〜って?そんな感じ?ウケるゥ」
経験上佐久間が自分に向けられる好意におそろしくにぶいことはわかっているはず。照美はただの意地悪だが、佐久間はますます頭を悩ます。
可哀想だ…
すぐにでもこの場を去ってしまいたいが、佐久間を置いていけない。
めんどくさくてたまらない。いっそ佐久間よ…誰かと付き合って欲しい。

「佐久間って鬼道と付き合ってんじゃないの?」

円堂の声はよく通るし、役割上鶴の一声になることが多い。そして内容はたいていが、突飛なのでますますの事だ。
「…えっ?」
最初に反応したのが鬼道であり、その鬼道はあっけにとられている。何故円堂が“鬼道と佐久間が付き合っている”という想定でいたのかは謎だが鬼道を見るにそれは間違いだ。
「付き合ってねえよ」
不動が円堂を睨みながら低く言う。まぁそうだろうけど、そう怒るなよ……
介入するか迷っているうちに円堂に手を引かれたまま渦中に飛び込んでしまった。
「あれ?そうなのか?」
「…なんでそう思ったんだよ…」
こうなったら仕方がない。自分がブレーキに、消火剤に、火消し役に勤めなくては。
「…ん?じゃあ源田?」
「だから、どうしてそうなるんだって!佐久間は誰とも付き合ってないぞ!」
「えっ?!そうなの?!」
「なんで誰かと付き合ってるって思ってたんだよ…」
「…いやぁ……なんでだろ」
「てゆーか佐久間さ、好きな人居ないの?」

めんどくさそうな照美の言葉が再び空気を両断する。
「えっ…」
「えっ?いないの?」
「……い、…いな、い」
「いるんだね」
災難だ、佐久間。
確実に今ここで、聞き出されてしまうだろうな。









***
これを書いていた事さえ忘れていた。
どうでもよすぎて。そのうち消そう笑


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