気付いてしまうともう落ち着かない。
風丸は髪をかいでいる円堂を、いつもなら照れて突き飛ばすぐらいはするのにそれもない。
止められない円堂は調子に乗って髪をひとふさ掴むと、それに口付けたり指に絡めて遊んだりしている。
「…具合でも悪いか」
「………」
「…風丸」
鬼道がただならぬ様子に気付いて声をかけるが反応がない。
「風丸」
「かぜまるー?聞いてるか?」
「オイ平気か?」
「………」
「…っかーぜ、まるーッ!!!!」
「!ぅわッ!ェッ?!つなっ、
つ、つなみなにっ…なにっ?」
自動販売機からこちらに戻ってきた綱海が通りがかりに風丸を驚かす。効果はあったが今度は驚き過ぎて落ち着かなくなっている。
「ハハハ!気付かねえからよ」
「だからって耳元で叫ぶか普通!」
「悪い悪い」
からから笑っているのだから、悪いなどと思ってはいないだろう。風丸が恨めしく綱海を見ていたら、再び驚かされた。
あまり距離も無い鬼道と佐久間の間にヨイショ!と掛け声をかけて椅子を滑り込ませると、そこに座る。
無理があるだろう、というスペースである。
「おい狭いぞ綱海」
「無理矢理入るなよ」
案の定両隣から苦情が上がると今度はもっと奇抜な行動に出る。佐久間が座る椅子の、少しだけ空いた後ろの余地に腰かけたのだ。
「!」
「ちょ、綱海それは…!」
「もっとせまい!」
佐久間の反応がこれだけというのも中々に驚くべきことなのだが、これをさらりとやってのける綱海にやはり驚愕である。

「………まぁ、…いい。
続けよう」
“まぁいい”とはあまり思っていないだろう鬼道の声に一瞬ヒヤリとするが、佐久間がいやがらないことに口を出すというのはさすがに鬼道も出来ないのだろう。声は不機嫌だが、少なくとも円堂は気付いていない。佐久間も原因はわからないのだろう。ただ心配そうな顔で鬼道の様子をうかがっている。

「風丸、大丈夫か?」
「えぁ?!、ぁ、…うん」
「ならいいけど」
「…てかお前何してるの…」
「風丸のにおいかいでる」
「ちょ、やめろっ」
「イテッ、あははっ!」
肘で小突かれて円堂はやっと風丸の髪を離す。しかし反省はしていないようだった。
たとえどんなに親しくとも恋人同士の自重の無い様は見るに耐えない。そのはずなのだがこの2人にはそれが珍しく当てはまらなかった。健全過ぎる付き合い方を心配されることが度々で、こういった恋人同士らしい姿勢を見ると周囲はむしろ安心するのだ。
円堂も気が長い。風丸のことが大事なのだろうが、長い付き合いの仲で一体どれ程の物が2人の間に築かれているのだろうか。
それを訊くのは無粋だろう。

(あーあ…佐久間の隣に座ればよかったな…)
普段そんなこと感じないのに、妙に胸元がスカスカする。そんなに大きさに自信は無いし、補強が無いとますます平らに見える胸板がむなしい。落ち着かない。
(…佐久間はノーブラで平気なのかな)
佐久間は背後の綱海と右隣の鬼道と3人で、ホワイトボードの磁石を動かしては話し合っている。

『佐久間、あんた寝るのにブラするの?』

…そういえば小鳥遊と風呂上がりに…
『うん。ノンワイヤーだから苦しくないよ』
『へぇ、なるほど。さすが長いこと男子部に居るわね』
『普段からつけてるけど…』
『はぁ?あんたやっぱりガサツなんだか几帳面なんだかわかんないわね』

…そっか。今佐久間、ノーブラじゃないんだな。
notノーブラなんだな。ああ…何考えてんだろ…
動揺しすぎで恥ずかしい…

「じゃあ佐久間、久々にFW入ってみるか?」
「え!いいのか?」
「最近MFばっかりだったから飽きてきたんじゃないかと思ってな」
「やったー!久しぶりだ!よろしくな、豪炎寺!」

…佐久間は普通だ…いいなぁ…

最近下着の事が話題に上がるのが多かったし、ついさっきも話したばかりだ。そのせいか意識が下着に向く。ブラジャーをしないでこの男子の輪の中にいることが、こんなに心細いとは。

「なんだか雷門にいた時期を思い出すな…」
このイレギュラーなチームに鬼道が苦笑する。
「確かになぁ〜」
それに円堂も同意する。風丸も懐かしく思い、一時当面の危機を忘れたが、照美の登場と佐久間の爆弾発言で、場は戦場と化すことになった。
しかしそれまでは穏やかにまっとうに、明日の試合についての会議が行われていた。
「あっ、不動!風呂上がったところかー?」
「チッ…みつかった…」
大浴場はこの棟に2つあり、圧倒的に男子が多い合宿ゆえに女子は時間を刻んで入っている。シャワーで済ます男子も多いが、それでも女子は急がなければ。シャワー室は脱衣場の真横にある。
「明日の試合の話し合いしてんだよ。お前も来いよ〜」
「ご自由にどうぞ。俺は寝る」
「エー!来いよォ!」
「相変わらず協調性が無いな」
「不動ぅー!」
円堂が引き留めるが効果は無く、ひらひらと手を振って廊下の門を曲がる直前、
「司令塔の意見があると心強いんだけどなぁ!」
佐久間の一声。
不動はくるりとこちらに向き、綱海のかげにかくれて見えない佐久間を目で探しながら近付いてきた。
「…佐久間いんの?」
(うっわ…恥ずかしい奴…!)
風丸は驚いたが、円堂は気付かない。その他はなんとなく厳しい視線を不動に送るものの、サッカーよりも私欲を優先させることは無い。
「意見を聞かせてくれ、不動」
鬼道が冷静にホワイトボードを差し出すが、不動はそれを受け取らない。
「…なぁ、佐久間は」
「ここにいるだろ!」
あくまで 佐久間 の不動は随分大胆だ。こんな奴だったかな…
風丸は不動の潔さに動揺がすっかり落ち着いてしまった。逆に不動は綱海に抱えられているような佐久間の状態に驚いている。
「…なにしてんのお前」
「さっき言ったろ。会議だよ」
佐久間がのんきに答えるが、不動はそれどころではない。
「ちげえよバカ!綱海に言ってんだ何してんだよ」
「だっこ」
「ハアァ?!ちょ、どけソコなぐんぞ」
「やめろお前ら!騒ぐなら部屋にもどれ!」
「不動、綱海。会議にならないだろ!」
鬼道と円堂が叫んだ時だ。


「会議?是非とも参加したいね」


トラブルメーカーあらわる。





***
回をおうごとに文がいい加減になってる。正直なんも考えてないイッチャッタァー!あ、知ってた?



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