※ ヒドイ。照美ヒドイ。


風丸は直ぐに“しまった”と顔を歪ませたが、そんなことで容赦するような照美ではない。
「もしかしてこないだ言ったこと気にしてたのかい?」
「でもまだダッサイ下着のままなんでしょ」
「だからまたなんか言われると思ってわけわかんない無茶言ったんでしょ」
「図星だろ?仕方ない子だね本当に君たちは」
「別に笑いやしないよ。でもあんまりひどかったら苦情くらいは言ってあげる」
「ホラ早くしなよ!時間無いんだから!」

「………」
「………」

風丸と佐久間は苦い顔で見合せて、渋々も渋々脱衣を開始する。
すると覚悟はしていたものの、即座に照美の“苦情”が入る。

「ちょっと!佐久間何その腹!」
「…腹?」
「割れかけてるじゃない!痩せすぎなんだよ君!」
「え…そうかn「風丸も!その太もも何?脂肪あるの?ぜんっぜん柔らかくなさそう」
「うるさい」
「しかもスポブラ…ボクサーパンツだし…」
「悪いかよ」
「悪いとも」
「うるさい」
「ボクサーはくなら可愛いのにしてよ。スポーツブランドじゃ色気無さ過ぎて」
「無くていい」
「またそういうこと言うんだから!意地っ張り!」
「意地っ張り結構」
「あの、2人共…」
「円堂君だって男の子なんだからね。セクシーな方がいいに決まってるんだから」
「円堂は関係ないだろ!」
「そんな風に言うってことは気にしてるんじゃないか!」

佐久間はオロオロ
風丸はイライラ。
照美は1人勝ち誇ったような顔で居る。

しばし照美を睨み付けていた風丸が、ハア、とため息。そして勢い良く佐久間に向くと、

「……佐久間、ちょっと」

いつもより厳しい、低い調子の声に佐久間は少々不安になる。
普段は優しくしっかり者の風丸だが、円堂が絡むと少しばかり幼く、余裕の無い女の子になるのは経験上よく知っていた。
「……なに?」
「下着見せて」
「ぇえっ?!」
この時の風丸は、いつものバッサリとした男らしい気質から遠く、一転恋する女の子。可愛らしいのだが無茶を言ったり、突飛な発言が珍しくない。
「今着てるやつ。見せて」
「え……と…本気…」
「恥ずかしがること無いだろう?これから裸でお風呂に入るんだから」
照美までも介入してきて佐久間に逃げ道は無かった。

「参考にする。見せて!」

円堂のことを持ち出されて余裕が無い風丸も、いつもとは違い妙に強引である。
ああ、本当に円堂のことが好きなんだな…
と、しみじみ思ったが束の間、こともあろうにハーフパンツが照美にがしりとつかまれた。
「……照美?」
「下ろすよ」
「やめろよ!」
遅かった。
そして照美は早かった。
勢いよく引っ張られて、佐久間は床に尻餅をつく。
自分で転ばせたくせに照美は飄々と何やってるんだい早く立ちなよと言ってくる。しばし呆然としてしまう佐久間とさすがに可哀想に思い手を貸す風丸。
「ありがと…」
「いや、じゃあ見せて」
「えっ」
「早くキャミも脱いでよ」
「照美っ…」
転ばされたことで照美をより警戒する佐久間だが、いつもはかばってくれるはずの風丸の助太刀が今日は無い。
「脱がされたくなかったら自分で脱いで」
「なにこれイジメ?!」
ヤダーッと声をあげるが効果などはもちろん無い。
裾を引っ張られて観念した佐久間は真っ赤になりながらブラジャーとショーツの姿になる。
「…なんだか変な状態だな」
3人とも同じ下着姿。
佐久間は真っ赤で若干震えているようにさえ見える。一方照美は堂々と、腰に両手を当てて仁王立ち。
「ふうん。やっぱり、下着は可愛いのつけてるよね」
「………」
「腹筋それ以上鍛えないでよ。本当に割れちゃうからね」
「別にいい…」
「よくないよ。わかってないなぁ本当に。君レスラーにでもなる気?格闘家とか?」
「いいだろべつに…体鍛えるくらい…」
「佐久間手、どけて。見えない」
「ぇえっ?!勘弁してよ…」
「ダメ。邪魔」
「ハイハイ抵抗しても無駄だからね。2対1だから」

照美に両手を掴まれて“お手上げ”のポーズの佐久間を、風丸はマネキンを見るかのように上から下までしっかり見た。

「…それ、高い?下着」
「……いや…先月一緒に行った店で買ったやつ…」
「え?2人でランジェリーショップ行ったの?ズルい!どうして呼んでくれなかったの?!」
「…動きにくく無い?」
照美の声は無視された。
「ワイヤー柔らかいのだし、ストラップはクロスだから落ちないよ」
「……ワイヤー?す、ストラップ…?って…?」
佐久間が今着けているのは白が基調のシンプルな物。ストラップとアンダー部分、カップ上部には細かい青のレースが入っている。レースと同じ青色の薔薇の刺繍がポイントになっており、ショーツも同じ仕様の物。ただし、
「それ、どうなってるんだ?」
「……紐のこと?」
「紐…?リボンの飾りじゃくて、…その…そこ、」
「ほどけるよ?」
「えっ……」

風丸にとって妹のような、おっとりとした佐久間が、
風丸にとって少々過激に思えるいわゆる紐パンなるものを装着していたことは、
風丸にとって少なからずショックであった。

がさつだなんだと言われても、佐久間のようにスカートであぐらをかくようなことはしない。いつも素っぴんの佐久間と違い、デートの時には少しだけれど化粧もするし、スカートもはく。
佐久間の女子らしからぬ面は風丸さえも心配する事があったのだが、まさか、こんな、

「…エロ…下着…」
「ぇえっ…そ…うかな…」
「紐パンなんかはいてる人初めて見たし」
「あ、そう…?」
「なんか…清楚っぽいのが逆にエロい」
「えー?!なにそれー!」
「ねぇ佐久間本当に彼氏いないの?嘘でしょ?
こんなえっちぃ下着着けてて彼氏居ないってまかり通らないよ」
照美は佐久間を拘束したままなので真後ろに居るが、姿見にうつった佐久間が見えていた。
「そ、…そんなやらしい…?」
「下着自体は清楚だよ。でも佐久間が着けるとえっちぃよ」
「なにそれー!」
「体がスケベだよね佐久間ってさぁ。おっぱいでかいし」
「もーうるさいっヤダーッ!離せ照美ばかばか!」
「着痩せするから貧乳かと思ってたんだよねぇ…けど最近また大きくなったでしょ」
「やだやだやだばかばかばか!」
佐久間は真っ赤になって照美を振りほどこうと必死である。風丸はなにやら考え事に没頭していて助けない。

「何してんのよアンタたち…」

呆れがにじみ出ている声かして、振り返ると小鳥遊が立っていた。




***

佐久間苛めて終わってしまった…佐久間苛め楽しすぎて終わらないかと思った。今さらだけどこのシリーズはゴールどころかコースも定まってないよ!



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