午前の練習が終わると久遠が円堂と鬼道を呼び出した。2人は顔を見合せ久遠に走り寄る。
やっと昼食だと喜んで去る多くの部員の中で、風丸と佐久間は2人を待った。

「…そこの2人も来なさい」
「えっ」
「お邪魔でしたら行きます」
「いいから来なさい」
「、ハイ」
「はい」

フィールドの隅でぽつんと待っていた風丸と佐久間は急に呼ばれて慌てるが、久遠の声の調子から説教や注意では無いようだ。

(もしかして円堂熱出してるのバレたのかな…)

風丸は心配そうに円堂の隣に姿勢を正す。
佐久間がその風丸の隣に行こうと向かっていたのを鬼道が手振りで自分の隣にくるよう指示する。
それに気付くと風丸は、鬼道が可愛く思えてしまった。

「今話していたことだが」
「あ、はい」
「ハイ」
「学年ごとではなく、レベルで分けた班にしようかという話が出た」
「…班?」
「幸いコーチ、監督共に指導あたる人数は足りる」
「…レベルというと…?」
「午後から軽いテストを実施し、五段階20人ずつのチームに分ける。合宿中はそのチームを主体にするが、もちろんそのチームに居るだけの実力が無いと判断されれば1つ下のチームに落ちる。逆も然りだ」
「………」
「俺はいいと思います。強化合宿なのだから、これくらいやってもいい。チームが違えば普段の自分のプレイがわかりやすくなるし」
「まぁ…そうだけど」
「でも監督。そもそもこの合宿に参加できないとされた部員もいるのに、これ以上」
風丸は学校に残してきた部員を思うとどうも釈然としなかった。
「最も下位のチームになったからといって帰すことはない。もしそのチームにさえ値しない場合はありえるかもしれないが」
「自分の実力をきちんと知るのも大事かもしれませんね」
円堂は理解を見せていたが、風丸は黙ることにした。両手を挙げて賛成はしにくい。
公式戦に出られない自分がチャンスのある部員の席を奪ったような罪悪感があったため、佐久間が放った毅然に思わず本人を見る。

「私たちも正統に評価されるのであれば、異存はありません」

“正統に”
実力主義の伝統に常に身を置いていた佐久間には、迷うことなど無いのだと気付く。
風丸は、自分は甘いだろうかと視線を下げた。
女子で男子部に入っているだけで我が儘をしている気分である。これではいけないと思うが、切り捨てるような気がして…

「もちろんだ。お前たちは奢った部員にも大変な刺激になるだろう」
「…わかりました。
それなら私も賛成です」
「では午後はテストから始める。
…仮にもお前たちは元日本代表。世界一のプレイヤーだ。最高クラスに入れなければ、恥だからな。
心して受けるように」

素直に“がんばれよ”と言えばいいのにな…

久遠の性格を知る4人はニヤニヤと笑みを浮かべると軽い返事をして食堂へ向かう。
風丸も、監督の素直じゃない一面にほだされて少し気が晴れる。
佐久間も堂々としたものだ。おそらく照美も動じないだろう。





「まぁ、予想はしてたがな…」

クラス分けが終わると面子を見て鬼道が言った。
「仕方ないね。実力だからね」
相変わらずの長髪を手ですきながら照美が笑う。
「女子かたまったな…佐久間が居るのは嬉しいけど照美マジ迷惑」
「嫌なの?ねぇ嫌なの?」
「なんで嬉しそうなんだよ!そういうところが嫌だ!」
早速照美からの屈折した愛情表現とも言える攻撃を受けてまいる風丸。
賛成はしたが今になってこのクラス別練習に不安を覚え始めた円堂と鬼道、そして豪炎寺。
「なんか…これから大丈夫かな…鬼道…」
「今さらだが俺も不安になってきた。照美のことを失念していたな…」
「まぁ大丈夫だろう。風丸と佐久間はあしらい方がわかってる。練習に支障が出るなら邪魔だと言って他のクラスに落としてもらえばいい」
「ヤダ修也カッコイイ…」
「キモイ」
「ひどぉっ!」
「お前たちも相変わらずだな…」

当然この収集のつかない状態を、久遠に見つかり叱られたので初日から他のクラスよりも練習量もランニングも増えた。
他のクラスからはその練習量に驚愕と尊敬、トップに入れるだけの者たちは違うのだという、勘違を受けたが、勘違いながら士気を上げることに効果した。そして合宿はより充実したものになっていくこととなる。
もとを辿れば原因は照美かもしれない。
世の中何がきっかけるものかわからないものだ。





男子サッカー部の合宿なのだから、女子といえば風丸達の他には雷門のマネージャーである、秋、夏未。そして夏休みだからと(受験生の身であるが)特別参加している春奈。しめて10人も居ないのだ。
しかしマネージャーたちはまだ仕事があると言うので効率を考えるとさっさと入ってしまうしかない。

いそいそと入浴の準備に取りかかったその時に、
風丸がやけに神妙な顔で呟いた。

「……照美、5分で入って出てきてくれ。そしたら次に入る」

「えっ?どうして?」
「……君何言ってるの?
無理に決まってるでしょ?
そもそも普段2時間入ってる人に40分以内で全部何もかも済ませろっていう時点でありえないレベルの無理が生じてるの。わかる?」
「無理は承知だがお前には裸を見せたくない」
「そしたらそっちの個室になってるシャワールームで済ませたらいいじゃない。知らないよ」
「あの、ちょ、2人とも」
「嫌だ湯船につかりたい」
「だいたい見せられないってどういうことだい!たとえ幼児体型だったってそんなに笑わないでいてあげるよ」
「そんなにって…
いや違う別に幼児体型なわけじゃない!そういうことじゃない!」
「じゃあなんだい!しっつれいな子だね君は!」
「ちょっと…2人とも…」
「だって……し」
「し?」
「………」
「………」
「………」

3人で、
うんと黙ってから、
照美がははぁと腕を組み、にやりと笑ってどうだとばかりに言い放った。


「下着が一体どうしたんだい?」







***

この展開は一体どうしたんだい?
どこいくんだい?いつおわるんだい?目的はなんなんだい?シラネ



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