双方部員の数が多いため、合宿での練習は学年単位に分けられていた。
おかげで過酷な特訓も少しは楽しくやれそうだ。

「佐久間!」
「あ、風丸!」
「今日からよろしくな」
「こちらこそ」

雷門、帝国両校のアイドル部員が早速手をとりはしゃぎはじめた。
2人は女子でありながら全国屈指の強豪校で部員として認められる実力を持っている。

「やっぱりでかいなぁ帝国」
「合宿所もかなり広いから、迷わないようにな」
「芝生で練習できるなんて嬉しいよ」
「昨日はがれたところ取り替えたばっかりなんだ。いいにおいするよな」

しゃがみこんで芝生に手をうめる2人。他の部員は無邪気な2人をちらちらと気にしつつ挨拶し合っていたが、実はだいたいが顔見知り。個人的に親しくしている部員も多い。合宿ももう三度目で、練習試合の回数も多い。雷門と帝国はいまや姉妹校さながらの付き合いなのだ。
激戦区の東京で1、2を争う実力校が同じ地区にありながらこの親密さである。
かなり珍しいかもしれないが、円堂たちの代からのことだ。
中学大会の地区予選から妙に縁付いてきたが当時とは多少顔触れも違えばチームの様子も変わっている。
どこまでもスタイルを模索する両校の柔軟さは共通するが、同じ戦法をとっても試合の動きかなり違う。刺激し合える良い関係を築いていた。

「ふふ…相変わらず子供みたいなんだから」
「あ、照美いらっしゃい」
「芝生が珍しいわけでもないだろう?」
「本当に来たんだな…めんどくせえ…」
「風丸さぁ、最近冷たいよね。別にかわいいからいいけど」
「佐久間!」
「あっ、つな」

巨大な動物が人間に飛び付いた瞬間を見たことがあるだろうか。綱海のダイブはまさにそれだった。
自分より随分小さい佐久間の体になんの遠慮もなく飛び付くその大胆さといったらない。一応男女であるということも加算すれば、抱きつかれて転んだ佐久間がただ笑うのも異常である。

「だ、大丈夫か…?」
「いたーい あはは!」
「あはは!」
「あははじゃないよ全く…
綱海くん監督に挨拶してきたの?」
「ああ、まださ。佐久間が居たからつい」
「…久しぶりだな、綱海…」
「おー!風丸!なんか可愛くなったんじゃないか?」
「ぇえ?!」
「前より女の子っぽくなった気がするなぁ」

「「集合!!」」

号令がかかり主将を探す。
円堂がじっとこちらを見ていた。
怒っているように見えてドキッとする。地面に置いた荷物を取って慌てて号令の元へ向かう。

「じゃあまたあとでな!」
「うん、あとで」
「世宇子も集合かけようか」
「佐久間!早く来い!」
「あっ、ハイ!
じゃあ2人とも、あとで」
「うん、じゃあね」
「おー」

佐久間も急いで主将に駆け寄る。異例ながら帝国の主将は1年生の鬼道である。
超実力主義の帝国では珍しいことではないが、形式として一応は3年生が主将を勤めるごくごく一般的な雷門から見たら不思議であった。

「綱海と何話してたんだ?」
「…え?綱海と?」

円堂の隣に立つと円堂は風丸を見ずにぼそりと言った。
綱海とは特に話していない。本当に挨拶程度のやりとりだけだ。
佐久間と何をと訊かれるならば不思議には思わなかっただろうが、風丸はつい
「なんで?」
と応えた。

するとどうだろう。
円堂はみるみる赤くなってそっぽを向いた。

「?円堂?大丈夫か?」
「、いや、なんでもない」
「でも顔あかい」
「なんでもないって!」
「熱でもあるんじゃ」
「ないっ、平気!だから!」

言い切ると距離をとられる。
昔から言い出したら聞かないし、怪我したって隠すのはいつものことだ。

熱があるのに合宿に参加したくて無理に来たのかもしれない…
あまり無理そうだったら仕方がない。本人はごねるだろうが休ませなければ。

長いこと女房役だった風丸はそんなことしか考えなかった。
自分のために嫉妬する円堂なんて思い付かない。豪炎寺が「あれは嫉妬だ」と教えてくれたことも結局それは無いという結論に至り、生きてない。


こうして夏の合宿が始まった。
この2週間が多少の波乱を生むことになるが、初日はまだ平和であった。







***

また下着関係ないん回!(ギャグ以下略

次回ちょっとは下着トークしたい(無計画)




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