※ 不動と佐久間
※ GOSSIP の続編(ルーミックパロ)
※ 一人称・捏造氏名・ばか注意



わがままというわけではないのだが、あまり我慢は利かないようだ。
「あついっ」
「ぅわ待て脱ぐなばか!」
言うが早いがTシャツに手をかけて、ぐいっと持ち上げ首をくぐらす。当然下着が露出して、その動作の過程に捻られる腰や胴体の曲線がなんともいえない。
「やめろってば着ろ!」
「ええヤダあついー」
「いいから着ろって!見てらんねえんだよ!」
「それはめいわくってこと?」
「そうだよわかったら着ろホラばか!」
はぁいと相変わらず素直に、脱ぎ捨てたTシャツを拾う。
しかし汗に湿った繊維が不快らしく、拾ったはいいが着ようとしない。早くしろ、と睨んでも、はい…、としょげた返事をするばかりで、その様は同情を誘う。してたまるか同情なんか。
理性を揺さぶる全てのものは、今は敵だ。厳しくあらねば。

「ふろう…」
「だめだ着ろ」
「……じゃあなんか、かして」
「はぁ?それ着ればいいだろ」
「だってぬれてる」
「お前の汗だろ」
「やだきもちわるいぺたぺたする!」
「じゃあそこに干してあんのでも着ろよバカ女!」
「わーいやったー!ありがとー」
「……………」

この、突如襲来した宇宙人と、数奇にも真剣に恋愛している。

真剣な恋愛も、もちろん宇宙人との恋愛も、不動には今までに無かったことだ。
軽く浅い付き合いばかりで特定の恋人が居たことも少ない。それを考えれば経験は無い方になるのかもしれない。
不動は恋愛に真剣さというものを持ち込んだことは無かったし、そんなことは自分に出来ない。合わないと思っていた。

しかしこうして、本当に本当に好きな人に会って、
不動の恋愛観はひっくり返った。

今度は真面目の度が過ぎるのだ。

もともと性格に真面目で融通の利かない面はあった。しかしそれが恋愛において発揮されると不動にはこれらが大きな欠点に思えた。
大好きなのに、触れない。
自分の邪心や下心が、愛しい彼女を汚す気がする。
釣り合わないとか、今までのだらしなかった自分とか、他人からの評価とか、
いざとなると下らないことばかりに縛られた。

「これかしてね」
「それじゃでかすぎるだろ。その、右のやつならまだ少し小さめだから」
「こっち?」
「そっちは左だ」
「あれ?ふふ、しっぱい」

なんてかわいいんだろう。
恋する自分はあほみたいだ。
あの柔らかそうな体に触ることを想像すると鳥肌が立つ。可愛らしい腹に指が埋まる感じ。すべすべの肌に舌を這わせたい。足の先までなんの躊躇もなく舐めきれるだろう。

「あ、そうだふろう」
「お前まだ不動って言えないの」
「これどう?カワイイ?」
干しっぱなしになっていた洗濯物からTシャツを一枚とり、ようやく頭をくぐらせたところでなんと作業が停止した。
早く、早くその凶器を隠せ。
「ふろう、このみ?」
「いいから早く着ろよ」
「答えてくれないと、きない」
「……悪知恵ついたなぁ…」
彼女が指しているのは身に付けているブラジャー。今まさに歳の割に豊満な乳房が収められている、たった一枚の砦である。
「このみじゃない?」
「……いや、…」
「いちばんは何いろがいい?」
「………なんでも」
「もう!さんこうにならないじゃないか!」

女子の下着のことなんか、正直興味無いのだが、そのはずなのに狂わせられる。一番似合う、一番可愛い物を着せてあげたい。詳しかったらとさえ思う。俺は病気みたいだ。

「似合うよ」

とても褒めた声の調子には聞こえなかったが、すぐにしまったと思った。
どんなに冷静でいようと努めても、この子には通用しないのだ。ついぽろりとボロが出る、その“つい”の多いこと。
その度に、例えばはしゃいでくれればまだいい。
自惚れた考えなのだがこの子は俺を好いていて、今までのことを思えばこの“つい”の度に煩わしくともそうなるはずだった。
それなのに。

最近、照れるのだ。

自分から挑発的な態度をとっておきながら(本人にその自覚は無くても)、いざ先ほどのような“つい”が出る。すると今までのパターンからいって、 本当?わぁ嬉しい とはしゃぐのが常で、その後随分長いこと上機嫌でいたりする。
それはそれで、もちろんかなりかわいかった。
しかし最近の、この、照れ。
これの破壊力たるやなけなしの誠実さと無駄に生真面目な性格が、必死に塗り固めて強化してきた理性を一気に脆くする。

「……、…」
「黙るなよな……」
「ぁ、…うん」
「…………」

俺だって、ボロが出ると恥ずかしい。取り繕ってる必死な自分を本当はわかっているからこそ、格好悪くて情けなくなる。
その上照れはうつるのだ。

「はぁ、…かおあつい」
「…赤い」
「………にあうって」
「あ?」
「……、にあう、って、…言った…?」
「言った」
「…………」
「……だから、黙るなよ…」

たかが、ぽろりと出てしまった一言に、こんなになってしまう。
これで可愛いとか、好きだとか、言ったらどうなるのだろう。倒れるかもしれない。

「……あー……だめー…」
「は?」
「あついーよけいあついくなったふろうのせいでー」
「“あつくなった”。浮くな」
「あつい、あつ い、く」
「あつくなった」
「あつくなった」
「よし。降りてこい浮くな」
「はぁい」

浮かれると浮く。
単純なことだ。

一見人間である彼女が宙に浮ける原理などわからないがそこは深く考えない。
真剣に向き合うならばまずその壁についても悩むべきなのかもしれないが、“さて置き”ができるくらいには、
どうやら惚れているらしい。

以前あれほど悩んでいたのがばかみたいに、受け入れてしまえば簡単だ。俺もたいがい単純なようだ。
今は相手が子供であり、かつ男女について性について、あまりに知識がないことが問題だ。
正直毎日襲いそうで、しかし何も知らない子供を、なんて。
道徳の破壊もいいところだ。いつからこんなに真面目になったのか。いや、もともと持ち合わせていたたちというのはわかっているが、一晩で関係をそれきりに、都合が良ければ数回、相性が良ければ曖昧な恋人に。自分の過去を、不思議に思う。遠くないのに。

「ふろう〜」
「ど」
「ふ、ろ、う」
「したったらずなのかお前?」
「しったらず?」
「舌が足りねえのかって言ってんだよ。それか頭か?」
「ふ、…、ぉ、う」
「ぶははダセェ」
「だせえ?いまなにか楽しかったか?だせえは楽しい?」
「………お前、ホント…」
だらしない女ならなぁとかあこぎなことを考える。本人に色気は全く無いが身体がやはりその気にさせる。ちぐはぐだ。その上でこの無邪気さ。ちぐはぐ。ばらばら。毒気が抜かれる。

「あ、あきお」

は?今なんて?

「そっか、あきお」
「…おい?」
「あきおなら言いやすい。ふろうは言いにくい」
「…で?」
「だからふろうじゃなくてあきおでいい?」
「………」
「あきお」
漫画ならハートマークでも飛んできそうな目の使い方。今の言い方なら語尾にもハートマークがついただろう。

「…お前の名前が呼んでみたい」

地球に生まれた限り一生呼べないであろうこいつの本名を、今急激に呼びたくなった。

「好きに呼んでいいのに」
「でも、お前名前が」
一応居ない間、遊びでつけた名前ならあったがそれで本人を呼んだことはまだ無かった。
「あきおがつけて」
「はぁ?いい加減な」
本当にこいつは面食らうことばかり言いやがる。
「あきおが呼ぶなまえになる」
「……なる?」
「なるよ。私はあきおのものだから」

本当に……

「……煽るんじゃねえよ…」
「あお?」
「黙ってろバカ女」
「あっ、それで呼ぶ?」
「呼ぶかバカ!」
「はぁい」
「…、……」

面食らうことばかり言いやがる。







2011.06.27






***

パロはただ押し掛け宇宙人女房ってとこだけなのであしからず。ラ○ちゃんこんなにバカじゃない。




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