※ 源佐久♀(成立してる)
※ 帝国・高校(年齢操作)


夏の合宿が始まった。
毎年恒例決まった期間、厳しい練習、詰まった日程、風呂の時間さえ決まっている。
だが何よりも苦しいのは、食事の量の制限である。


夕食。食堂。
「毎年毎年毎年…ずっと何年も何年もやってきたことだろうに…」
「改善されないんだよな…」
合宿は高等部のものだが毎年中等部の最高学年も参加する。話は何度も聞いてきただろうが、予想以上の惨劇に後輩たちはぐうの音も出ない有り様である。
「成神、なんか久しぶりな気がするなぁ」
「源田先輩。四時間ぶりです」
「練習はどうだった?」
「しんどいです…」
既に去年地獄を味わっている源田と辺見は成神の心情が痛いほどに理解できた。
「さっきまで吐きそうでしたけど…」
成神は呻きながらトレーに置かれた箸を取る。それを見て源田と辺見はつい笑った。
「腹は減りますよね…」
「わかるわかる。食えないと思うよな」
経験者は語る。
成神は力無く頷いて、塩気の無い味噌汁に口をつけた。

「おいしくない…」

ぐったりとした後輩たちを肴に思い出を語り合っていたら黙々と夕飯をかっこんでいた成神が呟いた。
「言うな……」
量においても味においても、お世辞を言うにも苦しいこの食事。
「ハァ…味はこの際いいや。おかわりあります?」
「無い。」
「えっ?これだけ?!」
絶叫は大げさではない。
平均的な一般男性が食べるとすれば十分な量だろうが、成長期真っ只中の部活を終えた青少年にこれだけというのは非道の域になるのでは無いか。
嘆き続ける哀れな後輩を無視して不味い飯を無心に食う。
「てゆうかなんでこんなに不味いんですか?仮にも帝国の食堂でこれはどうなんですか?おかしくないですか?」
泣き出しそうな声を上げる成神を佐久間がなだめて黙らせるが、不満で顔が歪んでいる。
「夕飯は…監督の奥さんが作るから…」
「成長不良になったら訴えてやる…」


さて大人気ないので騒がなかったが不味くて少ない食事に不満があるのは成神だけのことではない。
消灯時間が近付く中で1人また1人と空腹に耐えかねて、眠ってしまえと布団に潜る。
日を重ねるだけ早寝は増える。

源田は毎日先輩後輩からの野次と冷やかしを浴びながら、困惑している風呂上がりの佐久間を抱え込むようにして部屋におくる。
「またか。なんなんだよ」
「女子はここにお前ひとり。わかっていないだろう」
「わかってるよ!7年目だぞ?」
「いいやわかってない。俺の彼女だってことも自覚してない」
「なんでぇ?!」
すっとんきょうな声が上がるが、相手にせずに部屋へ向かう。

「そもそも合宿は家から通えって言ったのに」
「合宿の意味無いだろそれ」
「…だ…っ……まぁいい」
言い返そうとした源田が黙り、片手で腹を押さえてため息をつく。
「どうした、腹痛いのか」
「いや……」
ごご、と腹から地鳴りのような音がして理解する。空腹が限界を越えて、言い合う体力さえも惜しませるのだ。
「…今の、腹が鳴ったのか?」
「…減るだろう。どうしたって、あんな食事じゃ…」
もともと食の細い佐久間にとっては十分満腹になる量なのだが、大食らいの男子にはきつい。やつれたような気さえする。
「明日で合宿終わりだろ。何か食べに行こうな」
元気の無い源田を気遣って壁に突っ張った腕をたたく。
「…お前の作った飯がいい…」
普段からは考えられない程に弱った声。佐久間はその差が可笑しくなって、つい笑って承諾した。




「まだ買うのか?!」
翌日の夕方。学生寮から程近い商店街で、源田の食欲は暴走していた。
「野菜も食いたい。何か新鮮な野菜…」
「げんだっ!いくらなんでも買いすぎ…」
「食える」
けろりと言われて黙るしかない。我慢生活が10日も続いて反動が来たのだろう。そういえば去年もそうだった。こいつは去年も成長期で、今年もまだ成長期なのか。
「で、何作る?」
「なんでも。」
そう言ってぎっしり食材の詰まった買い物袋を3つ持ち上げ歩き出す。
「なんか大家族みたい」
佐久間も1つ持っているので買い物袋は計4つ。
「大家族?いいなそれ」
合宿の荷物を入れたスポーツバックも合わせると総重量はかなりのものだが源田は涼しい顔である。
「テレビで観た。子供が16人もいる家族でさ」
「16人はちょっと多いけど、3人は欲しいと思ってる」
「男の子?女の子?」
「どっちでもいい。サッカー教えて、一緒にできたらいいよな」
へえ、子供好きなんだな、と知らなかった面に驚いていると呆れた声で返される。
「他人事みたいに言うなよ」
「?」
「産むのはお前だぞ」


真っ赤になって震える佐久間を、毎度のことだと構いもしない。
寮に着いてもまだ赤く、あーとかうーとか言いながら買い物してきたものを台所に広げるのを見ていたら、源田は笑いが込み上げて、ふきだすと後は止まらなくなる。
笑い転げる源田を見ると、佐久間はますます真っ赤になった。

照れに震えながら作った食事はあっという間に吸収される。
「おかわり」
「早っ…」
繰り返される"おかわり"に座る暇もなく動いている。
「もうない!三合も炊いたのに」
「じゃあなんか、麺とか」
「は…、、え…?」
「そういやパスタ買ったよな」
「う、嘘だろ?足りないのか?」
「足りない」


食事が終わると疲れはて、佐久間はベッドに倒れ込んだ。
「俺が洗うから」
「当然だ…合宿より疲れた」
ようやく満足したらしい源田はそれを聞いてはははと笑った。はははじゃねえ、と非難を聞きながら食器を運ぶとシンクに浸し、積み上げられた皿の塔を片っ端から片付けていく。

「はぁ…よく食うなあ…
がつがつ食べるから作り甲斐があるけど」
「お前の飯がうまいから」
「………」
「すぐ照れる」
背を向けていても顔を火照らす彼女の様子がよくわかる。
余裕に構えて笑っていたら、反撃をくって皿を落とした。


「お前みたいのがあと3人もいたら、食事の度にくたくただよ」






***!clap thanks!***






***

宅の佐久間さんは料理好き。源田は食う専。

乱文・駄文失礼しました。
拍手ありがとうございます

という、拍手お礼に一時置いたもの。拍手なのか拍手お礼を読むための拍手なのかわからなくなるので撤去しました。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -