※ 源田と佐久間(帝国)
※ 成立してない



朝のざわついた教室で、前の席の咲山が振り向く。手には何やら小さな冊子。佐久間は机に広げていた雑誌から目を上げた。
「なに?」
「5人挙げて。仲がいい人。考えて、言わないで」
「…なに?」
「いいから」
変わった奴だよ、と思いながらも付き合ってやる。
考えるまでもなく親しい面々がぱぱぱと頭に閃いて、それで、と続きを促した。
「そしたら、指。5本の指、それぞれに、あてはめる」
「なにを?」
「今挙げた5人。」
「…指に?」
「そう。親指なら誰、とか」
「…本当になんなんだ?それ…」
目的がわからないまま、また、いいからと有無を言わさず続行させられる。呆れながらも指示に従うと咲山は幾分か楽しそうに見ている。
「…なんだよ…」
「おわったか?」
「うん。言う?」
「いや、いい。
これはさ、誰が何の指かで、その人をどう思っているかわかるっていう遊びだ」
…真剣にやって損をしたような気分だ。
いや、こういったものを本気で信じる者もいるだろうが、あいにく佐久間はその種ではない。どちらかといえば馬鹿らしい、と遠慮する方だ。
強制的に参加させた咲山を少し恨めしく思うが、たまにはいいか、と結果を訊く。

「親指は、」
親指は、鬼道だ。
「尊敬する人」
「おお、確かに。あってるかも。うん、そうだな。」
「鬼道?」
「あたり!あはは」
咲山も予想が出来たようだ。俺もだった、と教えてくれた。
ははあ、成る程。自分でやってみて当たっていたからこうしてやらせているわけか。
佐久間は続きを聞くのが少し楽しみになった。
「人差し指は…」
人差し指は辺見。
「これからもずっと仲良くしていきたい相手」
「辺見?」
「はは、辺見なのか」
「どうかな、怪しくなってきたぞその結果」
と、笑いつつ、案外そうかもな、とも思う。わかってる。そう思わせるのがこういう遊びの常套手段だ。
「中指は」
中指はお前だぞ、咲山。
「もっと仲良くなりたいと思っている相手」
「あはは、仲良くしよう咲山」
「はは、俺かよ」
「確かにな、お前謎多いから」
「お前に言われたくない」
「え、そう?」
「そう。次は、」
「薬指」
これは成神。唯一後輩。
「実は見下している相手」
「結構辛辣だな…」
「誰だよ」
くく、と含み笑いをしているあたり、予想がついているのだろう。
「成神」
「ははっ、ひでえ」
「それ結果がおかしいだろ?ひどいよな、見下してなんか」
「実は、だから」
「見下してなんかないってば!」
成神に伝えとくから、とからかわれる。そのくせ咲山が誰をあてはめたのかは教えてくれなかった。
「最後は小指な」
「うん」
「小指は」
「うん」
「命を掛けてもいい相手」





こういった物を嫌っていたくせいざ知ってしまうと誰かに試したくなる。
昼を過ぎ、放課後、部活が始まり終わるまで、
佐久間は仕掛ける相手を考えていた。

「佐久間、帰れるか?」
「えっ、あっ、誰もいない…?」

気付いたらもはや部員は散り散りに。着替えもせずに帰る奴も多いために結局仕掛ける間を逃してしまった。最後にはこいつにもやってやろうと思っていた源田しかいない。
源田とはいつも一緒に帰るので必然的に最後に実行することになるはずだったのに、最初で最後になってしまった。
「なんだ、誰かに用事でもあったのか?」
「誰かっていうか…まあいいよ」
「メールしてみたら?まだそんなに遠くに行ってないだろ」
「大した用じゃない。
それよりさ、源田」
佐久間は朝、咲山に聞いたように5人を源田に思い浮かべるように言った。
源田は不思議そうな顔をしたが、特に何も訊かずに従う。
「うん。思い浮かべた」
「言わなくていいからな」
「で、それから?」
「えーと、それからその5人を、指に例える」
「例える?」
怪訝そうに見られて言われ、佐久間は慌てて言い直す。どうも記憶が危うくて、表現が変だったようだ。
「違う。ええと、あの、そう。
あて、あてはめる。親指は誰かとかって、5本全部」
源田は慌てる佐久間を見て、ふ、と笑うと考え出す。
同い年なはずなのに、何だか余裕があるよな、こいつは。そんなことを考えながら、20も背の差があるのではないかと思う源田の顔を見上げて歩く。
朝、咲山が考える佐久間をにやにやと見ていた気持ちがわかった。相手の結果が楽しみだ。

「うーん…
考えたけど、佐久間」
「考えた?あてはめた?」
きょろりと目を動かして見つめ返してくる嬉しそうな佐久間を見ると、源田はつい笑ってしまう。
こちらはこちらで同い年なのに、と思うところがあるのだ。

随分幼いだとか、随分可愛い、だとか。

「これ、その人をどう思ってるかわかるテストなんだって」
源田の答えへの興味と、結果を言う楽しみが佐久間を笑顔にさせていた。
源田はまた、ふふ、と笑って立ち止まる。

「源田…?」

数歩後ろにとどまったままの源田に振り返る。やけに大人びた微笑みが胸を突いた。

薄暗く人の居ない街路、頭上の街頭が2人の影をゆらゆらと伸ばしている。



「お前は小指だったよ、佐久間」












小指のあなた
【The little finger is you】







2011.03.27.







***

当然佐久間も小指は源田。
源田は昼休みに咲山にテストされてたっていう捕捉…
あとこのテストは存在しません捏造です。

BLって成立しないのが前提だと思ってる。成立する=ホモップルor感化と妥協
個人の考え方ですけろ。けろちゃいむ…←




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