2012/02/04 Sat 13:53 ★ 単発連載《 箱 》B ※ 意味なし。リハビリ用 ※ R18 ※ 鍵解除(2013.02.04) もうずっと外に出ていない。退屈。退屈退屈退屈退屈退屈退屈退屈退屈退屈退屈… 「退屈…」 と、繰り返しても退屈は紛れないので仕方ない。ノートを開く。教科書を開く。参考書を開く。つまんないなぁ。 「つまんない……」 シャープペンシルの芯を出すと、ぐちゃぐちゃぐちゃーっ!と勢い良くノートに連ねた丸を書く。その勢いのまま机に倒れて上体の力を完全に抜いてハアーッとため息。暇だ! (全部つまんない。つまんないつまんないつまんない。 つまんない問題つまんない教科書つまんないつまんないつまんない) 「ハァー!」 ため息と、“つまんない”。“退屈”。“暇”。私の口のおともだち。なかよし。やめてよ。ネガティブ。 (これって治らないんだよな) 机に広がる髪をひとふさつまんでぱらぱら落とす。髪は真っ白だ。眼も異様にあかみが強く、眉毛も睫毛も白いのだ。 (病気じゃなくて障害だもん) 「……会いに来て。アナタ…」 じっと黙って、くすっと笑う。 そろそろ狂うかもしれないな。それは特別憂鬱でも無い。どちらかといえば愉快に思えた。自分の事はいつも第三者的に見る。だから狂うのも怖くない。 (楽しそうね) 狂ってる自分を見てるのは楽しそう。でもこんな考え方ができるってことは、たぶんまだ余裕なんだ私のアタマ。 『明るいなお前…キショイわ』 冷静に愉快に自分の身の上や現在の環境、あといい加減暇で狂いそうだ!と語ったら、彼はちょっと辛そうに毒づいた。 明王。会いに来て。暇だ。暇狂う。 「………ぁあア暇、ッッだ───────────アアアアァァァァァ─────────イイイィィ………」 「…うるせっ」 「あっちゃん!」 「ばか?お前。狙ってんだろ」 「あーんごめんねぇわざとじゃないよぅ」 「きもちわるっ」 「あははっ」 明王は嫌そうに顔をぐにゃっと歪ませながら、床に鞄をベッドに袋をぼぼんと捨てて会いに来る。 その数歩の速さときたら! 「やわらけぇー」 「うん。あっちゃんのためよ」 おっぱいが好きなあっちゃんはエッチ。男の子ってみんなそう?エッチ! 座る椅子の前に膝を着くのとほぼ同時に胸に顔をうずめるとぎゅううと強く体を抱えて 「ふぁーやぁらけえー」 「あははははー」 「きもちーわー」 「よかったねーあっちゃーん」 アーあっちゃんタバコのによい……また吸ったのね。わからない人。 「ゴム買ってきたで」 「タバコ吸う人とはそういう事できませーん」 「風呂入るし」 「嘘。いいからハミガキして。今度タバコ吸ったらもう、あれだ。かんかんよ」 「おめぇがか」 不動はへばりついていた女の体からちょっと首を反らしてニヤリと笑った。 「そ」 「じゃあこわくねぇなァ」 「じゃあもうエッチしないから」 「別にいいから」 (ちぇっ、) 立ち上がり、洗面所に向かう不動の背中を見つめてため息。 わかってるけどさ。 (『別にいいから』) 頭の中で繰り返して傷付く。私なんかは、ちょっと都合の良いおもちゃ?おもちゃって表現、陳腐だな。なんだろ。ペット?違うなぁ。セフレ?うーん。おもちゃ…なんだかなぁ。人形?遠退いてる。 「お前俺の歯ブラシ捨てた?」 「いや、キクさんだよ」 「はーんなるほど。無視か。ババア。チッ、」 そう言いながらしっかり歯ブラシをくわえている。オイ、それ私のだろ。お前虫歯無いんだろうな。別にいいけど。 しゃかしゃかと歯をみがきながら不動はゆらゆら歩いていく。こういう姿を見てる女の子、いっぱい居るんだろうな。いっぱいいっぱいいーっぱい。 (「好きよ、明王」) 口だけ動かして声は出さない。不動が来ている時だけは“退屈”も“暇”も出てこなかった。 (…好き?……どうかな) 回転椅子をギシギシ鳴らしながらちょっと回って反対へ、ちょっと回ってまた反対へ。腕を組んでいると明王は喜ぶ。幸い大きい(らしい)胸が強調されて見えるからだ。 「あれ?俺、コンビニの袋どこやったっけ」 口の端に練りハミガキが乾いてついてる。あのままキスするとミントの味がしてちょっとさわやか。 きょろきょろと回りを見ながら明王が部屋をうろついている。 自分と、家政婦の女。あと明王。 この部屋には3人しか来ない。 “来ない”じゃないか。私は出れないし。出てもいいけどさぁ。そしたら帰らないし。 「会えないもんね……」 ボソッ…… (えっ?) 今、口に出した? 顔を上げると明王が立ち止まって目を丸くしてこっちを見ていた。聞こえたらしい。ま、いいけど。いくらでもごまかせるモン。 「…会えない?」 「なにが?」 にこっと笑ってとぼけると、明王はちょっと怒った顔になる。 「今、言ったろ。会えないって。なにが?」 「さぁ…?…あ、そうそう。なかなか会えないもんねーって、ちょっとしみじみ思ってたから」 笑顔は、崩さないよ。 あなたはここまで来れないでしょ。 「はぁ?ごまかせるかよ」 「こまかしてないモン」 「……………」 「……なに?」 「きっと、お前みたいな女なんだろうな…」 「…?」 どういう、意味。 付き合ってるわけじゃない。好きって言われた事もない。あなたはそのうち私に飽きて、こんな部屋にも来なくなる。 (わかってるのよ、明王) 頭を撫でるとタバコのにおい。私、タバコ、毒なの。言わないけど。 「そんなに好き?」 「やわらけぇもん」 「フフッ、赤ちゃんみたい」 乳首に吸い付く明王の唇。胸を抱えて揉む右手。貫くまら。頭から散らばる白髪はすべて、私の絶望なの。わかる?あっちゃん。言わないけど。 「ぁッ、っ、ンく」 「声出せよ」 「出させてみろ、よ」 「、ク、ぁ、締めンな」 「ふふっ、ごめん」 「イイよ、きもちィー」 あ、やだ、痛い。 あっちゃん、吸いすぎ。おっぱい痛い。 (『別に』) 「っ、アッ」 (『いいから』) 「、…、…ンンッ」 (あははっ) あっちゃんが真剣になりすぎて椅子にぶつかる。椅子はがらがらーっと滑って行って、机にぶつかる。 ばーん。がしゃーん。ばさばさ。ころころころー…… あなたが私を貫いても、何回も腹をぐちゃぐちゃに突いても、 知らない! 私には、箱がある。誰にも開けらんない。鍵かけて鍵捨てたから。 あっちゃん。 あなたがおいしそうに舐めてるその脂肪の奥には私を爆破する爆弾が入ってるの。 箱には爆弾と痛いもの。『別にいいから』も入ってる。開けれないけど入ってはいけるみたいで、“つまんない”と“退屈”、“暇”とタバコ、私の知らないあなたの女。そんなのが、詰まってるのよ、あっちゃん。 “暇”と“退屈”が増えれば箱の中身がどんどん増えていくでしょ。そうすると爆弾がくるしくなってイライラして、どかーん とか。どう?ついでにため息も積もるみたいだよ。言わないけど。だって開けらんないし。意味ないし。ウフ。 「あっちゃん、鍵返して」 事が終わるとさっさと着替える不動に女はいつも言った。 「今日閉めたらポストに入れて。そんで帰って。もう開けちゃだめ」 「………やだね」 (そしたら、私出てくのに) 「そしたら会えないもんね」 舌を出してふざける不動に深いため息。私の箱、もうちょっとよ。 「そんなの別に構わないでしょ」 あきれた。からかってさ… 「………」 「まー便利だろうけどさー」 それはさーわかるんだけどさー私はさー不便なんだよーもうここ飽きちゃったーヒマー 「次子」 …あれ?名前知ってたっけ? 「また来る」 ちゅ。 やめてあっちゃん心臓止まる。 おっぱい好きなんじゃなかったの。そんな真ん中、骨しか無いよ。 そこは箱に一番近い場所。 でも安心してね。巻き込まないよ。1人でできるモン。 (どかーん!) ← top → |