2014/12/22 Mon 16:53

★ インディゴ・ナイトF



※ 誤字あまり直さないスタンス
※ だれおまは今さらだよね
※ だれおまだお


----------

しばらくして連れてこられた少女はやはりヒロトがここを最初に訪れた際に案内を務めてくれたシスターだった。
「本当にまたいらしてくださったのですね」
「いや、残念ながら今日も仕事ですよ」
「そうでしたか…今はお休みも出来ないのでしょうね…」
その屈託無い様子は引き連れてきたシスターの表情を余計に暗く、深刻なものとして引き立たせる。
「はじめまして。サクルとお呼び下さい。前回は刑事さんにも名乗りませんでしたね」
「どうも、ウルビダと申します。殺人課の捜査員をしております」
サクルはウルビダと握手を交わし、青ざめたシスターの隣に座った。
「シスター・イラハ、ご気分でも…」
「はぁ…能天気だな君は」
シスター・イラハはサクルよりも5、6歳ほど年上のようだった。顔立ちは全く違うが2人はまるで姉妹のように気安い間柄に見える。
「お伺いしても?」
「はい、どうぞ」
「私はどうして呼ばれたのでしょう。何のお話なのかイラハはお話しして下さらなくて」
「では、まずはこちらを見ていただけますか」
ウルビダが資料を手渡すとサクルは上品な所作で会釈を返し、資料を読み終えるとシスター・イラハの不調の理由をさとったようだった。
「悪魔ですの?」
「!」
「えっ、いや…」
殺人などという重罪を犯す存在となれば、この職に携わる人は皆悪魔だと言うのか。ヒロトは半ば呆れた心情で否定したが、ウルビダは静かながら驚愕していた。

“悪魔は居る”

風介が重く告げた言葉だ。
「…悪魔だと思われますか」
「ウルビダ、」
「それを確かめにいらっしゃったのですか」
「いいえ。教会からと思われる情報提供の電話が警察に寄せられましたが、その教会を探していて」
「でも、それは以前いらっしゃった時すでに…」
ウルビダは、真実の可能性がある事柄を、それがどんなに忌憚なことだろうと否定をしない。
犯人が悪魔であるかもしれないと、いつかどこかで思ったのだろう。
奇妙な話題だが、ヒロトは黙って聞くことにした。
「お話を伺った全ての教会で否定されましたので、もしや犯人を庇われていらっしゃるかも、と。再度被害者の詳細をお伝えに」
「ああ、なるほど」
庇っているという疑いを教会に向けている事をあまりに率直に告げた相棒にヒロトは戸惑ったが、それにすんなりと納得し、嫌な顔もしないシスター・サクルにも驚いた。
「それで、悪魔だと思われる理由は」
「…私は、問うたのですが」
「確かに、悪魔か、とおっしゃいましたね。何故そう思われたのかお聞かせください」
「それは…」
「シスター・サクル、ここでの応答に咎めはありません。答えられるなら」
シスター・イラハは落ち着きを取り戻していたが、まだ顔色は優れない。
若い修道女が2人、それぞれに背負う物に対してヒロトは知識も持たず想像も出来ない。
発言に大きな制限でもあるのだろうか。
「…差し支えなければ、是非」
ウルビダの熱意はいつも静かだ。
「私からも頼みます。ほんの少しの手掛かりも必要なのです」
2人で頭を下げると、シスター・サクルは慌てたように話し出した。
「私はまだ学生の身で、今はそれほどの制限も無く多くの面で未熟です」
「………」
「自由に物事を考えすぎるのです。神の御心を知るにあまりにも…」
何が言いたいのかわからず、2人は顔を見合わせた。一方で2人のシスターも同じようにして視線を交わす。
「…お許しください。他愛ない戯れ言と受けてくださるのならお話もできます」
「ああ、それはもちろん。確証があるのでも無い限り証拠や大きな可能性とする事が出来ないのが警察の不便なところでして」
「…では、ただのお喋りとして聞いていただけますか」
「感謝します。こちらがお願いしているのですから」
「………」
話す決心がつかないのかシスター・サクルはためらいがちに話し出そうとしては口をつぐみ、じっと黙る。
悪魔のことを語るのは、修道に在る者にとってどんなものなのだろう。

「実は…」
いくらか時間が経って、庭で遊んでいた子供たちの声も去った後、ウルビダが言った。
「監察医が、悪魔は居ると…」
「お医者様が?」
怪訝そうに声をあげたのはシスター・イラハの方だった。
「信頼のおける医師ですが、非常に柔軟な思考をする人物です。科学や医学で世界の全てを説明できるとは考えないので…」
「…変わった方ですね」
言ってしまってからイラハは口を押さえた。若い些細なうかつを許せないのか苦々しい表情を浮かべる。
「悪魔が居ると彼が言ったのを、私はどうしても気になって」
「…そうでしたか…」
「だから悪魔か、と聞かれて、驚きました。そうですと答えそうになってしまうほど、私は今度の事に邪悪さを感じている…」
「シスター、どうか。あなたが何故悪魔を感じたのか教えてください。シスター・イラハは、あなたは悪魔を恐れぬと」
「それは私が以前に悪魔を払った経験があるからです」
「……悪魔払いを?」
「………」
司祭でなく、シスターが祓魔を行うなどという話は聞いた事がない。確かに悪魔を語る上で、サクルの言葉を教会の意見としてあかして良いとは思えなかった。
「払ったと言って良いものか…帰したというか…」
「もしや3年前の」
「いいえ…あれは…」
「サクル」
(この子はあの事件が悪魔の仕業とは考えないのか…)
イラハに止められてサクルはまた黙ってしまった。
変わりにイラハが話し出す。
「この子は悪魔に好かれやすく、狙われやすい体質で…」
「………」
「ここの孤児でも志望者でもありませんでした。悪魔から隠すためにここで保護しているのです」
では悪魔とは何たるかを、このシスターは経験として知っているというのか。
思わず息を飲む。
信じがたい話なのに、何故今から語られる事が真実だと思うのだろう。
目の前で太陽の瞳が、覚悟を決めたようにこちらを見据えた。



-----

※ イラハ…照美。アラビア語で女神
※ サクル…佐久間。アラビア語でハヤブサ

名前については後々アレソレする予定



 top 




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -