2014/12/16 Tue 18:11

★ インディゴ・ナイトA



※ めちゃくちゃやで!
※ 今のところヒロト、ウルビダが主軸
※ いっぱい出る可能性有り

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検視・解剖の結果7人は10日の間に相次いで殺害されたことが分かった。
監察医はウルビダの幼なじみで、変人で有名な子供である。
「風介いくつになった?」
「もうすぐ16だな」
「1人だけで検視するって珍しくない?」
「普通無いけど。
最初に見つかった2人を担当してたのが下手で…」
ウルビダもヒロトも特殊な人材であるが、風介は特異中の特異。11から現場で死体と生きてきたプロフェッショナルである。
生死に対する定義に疑問を抱き続けてきたらしいが、教育を経ずして現在の仕事に就いた奇人でもある。

遺棄された死体が次々と見つかる…
同一犯の可能性を発表していないので市民はそれほど騒がないが、ちょうどクリスマス・レールの内側と外側で、治安に大きな差があり、いつも犯罪への反応は内側の方が大きい。
ヒロトとウルビダの自宅は内側にあり、過去教会だった建物が聖9年戦争で焼けた跡を利用して造られたアパルトマンで、レールの南側に近く周囲は閑散としている。

「明日から来るんだから、仲良くな」
「風介は良いよ。でもハルヤは苦手だ」
「そう?可愛いのに」
ハルヤというのは風介の犬だ。
「生意気だし、挑発的だし」
「しばらくはお隣さんなんだから、ちょっとは歩み寄りなさいよ」
犬といっても一般的に飼育される種類とは違い、超重量系の亜種で小型の馬よりも一回りほど大きい。ネイティブ・ミゴラ・ヒューマノイド・トイ・テリアというらしい。以前風介に覚えさせられた。
ヒューマノイドというからには人型かといえばそうではない。
脳量は人間と変わらないし知能と声帯が発達していて、喋る。
人間と同じものを食べるし、人間と同じ病気にかかる。そしてほとんどが職に就き賃金を得ている。
ちなみに晴矢は軍犬であり、風介の伴侶で、明日同じアパルトマンに越してくる。

「同一犯?」
「ぜったい」
「根拠は?」
「………」
監察医として飛び抜けて優秀な風介だが、その優秀さは才能から8割と言える。
職務に必ず必要な説明や、根拠を示すということがあまり得意ではない。
証拠を潰さず遺体を痛めない技術はずば抜けて居るのだが、
他殺だ、と断定して、じゃあ根拠は、と問われると、なんとなく…とか、勘…とか、不機嫌そうに呟くのだ。
しかしマシになった方である。
以前は遺体がそう言ったのだとか、細胞が話していたのを聞いたのだとか生真面目に説明し、それが伝わらない事に対して不満を募らせていた。
これでもマシになったのだ。
「私らには細胞の声は聞こえないし、血球の会議も見えないんだ」
「………」
警察に配属されてからしばらく、ウルビダは風介と警察をつなぐ通訳のような役割を担っていた。
そのやり取りからコツを得た捜査員たちも、近頃はウルビダを介さなくても理解できるようになったようだが…
「不便だなぁ…」
「まあね。とにかく急ぎだから簡潔に」
「ヒロトもわからないの?」
「ごめん」
「不便だなぁ…」
不便というのは、自分が、ではなく、こちらのことを言っている。
体液のダンスや細胞の声が感知できない人々を風介はいつもあわれんでいる。
「ここわかる?」
貼り出されたレントゲン写真をクマのマスコットがついたボールペンで指す。
「肋骨が折れてる?」
「第2から第3、左は第4までね。しかも後ろから折れてる」
「わざと?」
ペン先のクマのマスコットは微笑んでカタカタと首を揺らしている。
ふと、風介の前髪が可愛らしいヘアピンでとめられていることに気付いた。
「わざと。デビーは死ぬ前ライザは死んだ後」
「折られたの?」
「きっと羽を折りたいんだろうね。犯人は男。背骨は傷ついてないのが、ちょっと怖いな」
(羽…?)
ウルビダは何を疑問に思った様子も無く、質問を続けている。付き合いが長い分、風介の言葉の解釈に慣れているのかもしれない。
「死因は毒かな…はっきりしないけど」
「毒?同じもの?」
毒物で殺害したなら入手経路を辿れば早い。
案外早く片付くかもしれない。
「同じじゃないけど、同じ」
「ん?」
「はっきりしないなんて珍しいな」
同じじゃないが同じ、に首をかしげてしまうヒロトは、風介との会話がまだまだ下手なのだ。
「たぶん、新種というか…天然物だろうけど」
「ドラッグ系ではない?」
「すごく清んだ毒だから、本物だと思う。でも会ったこと無いし、血が混乱してて何を言ってるのかわからない…」

風介によると血液や細胞には彼らだけの言語を保有し、遺体の性別や年齢によって方言や訛りも存在するという。
毒物で亡くなった遺体の体液は大抵混乱しており、王(風介の言葉で、脳のこと)が退去した事にも気付かないらしい。
王の退去は脳の死であり、細胞や血液は王を深く愛していて、守るためだけに働いている。そのため王が退去すると後を追うらしい。
そして風介による“死の定義”が満たされる。
「デビーはクイーンが先立たれてる。ライザはキングが先…
同じものだけど…」
クイーンとは心臓であり、キングの妻。我々が認識する人物そのものは風介にとっては国土である。
不思議だが、理屈はなんとなくわかる気がする。
「作用の仕方が人によって違うということか…」
「それか、操れるかも」
「効き方を操れるってこと?分量とかで?」
「玲名さすが…よくわかるね…俺ちんぷんかんぷん」
本名をつい呼んでカカトを軽く蹴られる。
「2人の使者を招待してみる。出会えば話し合えるかも」
「わかった。忙しいだろうけど頼むよ。他のボディ(遺体)は調べたのか?」
(使者を招待?)
「…隣の部屋…その隣の部屋も…その隣の部屋も…」
一気に7人を検視して、さすがに風介も疲れが見える。何の気なしにひたいに光るヘアピンをつつくとヒロトの手を捕まえて自分の頭に押し付けた。
「…?風介?」
「撫でてやれ」
「えっ、あ、そう、そういう意味か」
風介はよくハルヤやウルビダに、“いいこいいこ”をしてとねだる。
どんなに惨い遺体でも、皆愛称で呼び貴ぶ風介を、尊敬する者は少なくない。




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