2014/12/16 Tue 04:54

★ インディゴ・ナイト@



※ 専門知識なしドイヒー
※ 私だけ楽しい(ファンタジー?)
※ 登場人物不明(思い付き)
※ 悪魔と教会と警察


-----------


7人目の被害者が見つかって、皆がく然とした。

草むらの中で横たわって居た少女は7人の中でも特に損傷がひどく、カラスにつつかれ酷い様だった。
「7番目っていうのは…」
「違うだろうな」
ウルビダは長く深刻そうなため息をつく。まだ18だが、紛れもなく刑事だ。
「あのさぁ…」
「何?」
「良いんだけど。別に、あの、君の能力とか疑ってるわけじゃなく」
「何」
「女の子だし…」
もっと…こういっては何だが、軽いというか、優しいというか、そういう場面にいてほしい。
「女だから据えられたんだろ」
「それはそうだけど」
「男だらけの捜査陣…被害者は余計に哀れだな」
黄色のテープが張り巡らされた辺り一帯は険しい顔をした男たちが見逃してはいけない物を探す姿が物々しい。
ヒロトはウルビダを足元から頭までゆっくり眺め、ため息をつく。
「何だ…」
「ウルビダは内勤希望かと思ってたから」
「こっちの方がやりがいありそうだったから」
「まぁね…」
トレンチコートから地に伸びる脚は真っ直ぐで、ラインの入ったソックス、ヒールの高いローファ…コートの下には学校指定の制服を着ている。
「学校どう」
「行ってない。単位は足りてる」
「あっそう」
「あ、呆れたな。人のこと全然言えないくせに」
「呆れてなんか無いよ。ただ先生方、さぞがっかりされただろうと思ってね」
ウルビダは高校7年生。
ヒロトも同じ学校の卒業生だが、相似点はそれだけではない。
高校はもちろん授業を受けたり部活に参加したりと、大抵の生徒がカリキュラムを修了するために1年ごとの期間を使う。しかし自分の能力だけで進級もできるしその資格があるとされれば在学中に国の仕事に就くことも出来る。
連邦国立ドガル全門ハイスクール、は、卒業と共に政府の飼い犬に成る事を決定付けられた学校である。
生まれた家庭がある程度の生活水準を満たしており、将来安定した(高給の)職に就きたいというような者は必死に勉強して受験して入るが、ヒロトやウルビダのように親も家庭も無く他に選択肢など無い者は最初から国の奴隷である。
転職するには授業料をすべて返金すること。
これが受験して入る生徒との違いである。

ヒロトは17ですべての過程を修了し、資格が認定され次第すぐに職務開始希望を提出した。
級を飛び越す人材は希望を出すまでもなく何処でも奪い合うほど欲しいものだが、本人の希望はさほど通らない。
連邦警察の殺人課に配属。
ヒロトの希望は病院だったが、年度ごとの転部希望届けを出し続けたとしても、聞き入れられるのは何年も先だろう。

在学中に知り合ったウルビダと、18の時に結婚。
今日は結婚して2年目の記念日なのだが、夫婦揃って現場に駆り出された。

ウルビダは研究職が向いていると思っていた。大学からもスカウトが来ていたのだが、全て蹴って夫と同じ部署に来たのだ。
2人のような身の上なら、早い結婚は珍しく無い。
結婚は義務であり、入学の際の契約でもある。
卒業間近に手近な相手と結婚して、さっさと別れるのもよくあることだが、ヒロトとウルビダは本当の意味で、真実の誓いの上で結婚を決めた。
お互い以上に大切な人間も事柄もなかったので自然のことだった。
人としての尊厳や権利の多くを詰られる身の上、真実本当の誓いでなければ結婚の意味は無い。それまでもを捨てる気にはなれなかった。


「恵まれた子だったろうに…」
遺体のそばに屈み、手を合わせる。ウルビダのコートのポケットにはいつも、数珠が入っている。
じゃら、と鳴るが、取り出さない。
「検視の結果が出るまでわからないけど、もしかしたらこの子が最初かもね」
「恐ろしい速度だな…」
胸の前で十字を切り、祈り、もうひと度まぶたを開くと冷静な目になっている。
「速度?」
「この子がもし最初なら、そして同一犯なら、間隔が狭すぎる」
「確かにね…」
「ほとんど2週間か10日くらいで全部こなしたことになる」
「………」
異常者のやることに道理などはなかろうが、ルールやこだわりがある場合が多い。
ウルビダのいうとおり、かなり短い期間の間に今日まで7体の遺体が見つかっており、おそらくは同一犯による殺人である。
最初の2人は事故死とされ、また4人目、6人目も事故死あるいは自殺とされていた。
それが昨晩急に覆ったのだ。


『あまりにも重い罪の告白を受けました。明かさないで居る事は、更なる犠牲と罪を増します。どうぞ中央から西区に下る、クリスマス・レールの下を探してください…』


名乗りの無い電話はおそらく修道院からのものだろう。
ある者から7人もの人間を殺したという恐るべき告白を聞き、懺悔を許して欲しいと泣きつかれたのだと言うのだ……

その“7人”の3人目と5人目について、殺人課では同一犯と見て捜査を初めて居たところだった。
修道院からの電話を受けて、更に別件を追っていたウルビダと他2人の刑事が捜査班に投入されることとなった。

クリスマス・レールは正式名称では無いが、市民に深く浸透した俗称である。
クリスマスの日に開通したということもひとつ。また高い建物などからそのレールを見下ろせば、旧市街を縫って伸びる線路は星の形のようだった。東に広がるもみの森が、ちょうど星をてっぺんに飾ったツリーのように見えるという。

その鬱蒼としたもみ森の奥に、建てられた当時の姿のままに、古い修道院が佇んでいる。





 top 




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -