生徒総会も間近で、貴女が放課後生徒会の仕事がある為に部活に顔を見せない日が何日か出て来た。
新設校という事もあり、学期に2回ある生徒総会。
貴女は副会長なので何度か廊下で擦れ違ったが俺等見向きもせずに書記やもう一人の副会
長と話していた。
声を掛けようと思えば挨拶位は出来たが、向こうも忙しなく通り過ぎてしまうスピードが速くてそれは叶わなかった。
どちらにしろ"あの日"の事があった為に気不味く、視線は泳いでしまい他所他所しい自分が在り貴女の顔もまともに見れずにいるのだ。

失敗した…あんな事、言うつもりなかったんだよ。

今迄通り友達以上恋人未満な微妙な位置でいれば良かった。
放課後、本日は雨の為にロードを削り5対5のミニゲーム、一年対ニ年、カントクの目は楽しんでおり、一年達は俺達二年の去年の成績を囁き合っては怖じ気付く奴等も出て来た

やるからには常に本気でいかなきゃな。

あれ…先輩?

沢山のプリントを抱えたままでカントクに軽く声を掛けるとベンチに腰掛ける。
アップをしているとばっちり目が合ってしまい、下手に逸らす事も出来ない。
んな見詰められてもな…アレ?髪濡れてる。
雨が通路で差し込んでたのだろう。
瞬きもせずにも一度目が合えばふんわりと微笑みを向けられた。
僅かに濡れた髪が色っポイ。

その微笑みは何々だよ…いちいちドキドキしてしまうんですが?センパイ。

けれどゲームが先で、一気に頭、思考を切り替える。
今は部活中だ。



「凄い……一年生が日向君達に勝つだなんて…」

「へぇ。バスケ部も頑張ってんじゃん。副会長、こんなトコで仕事サボると会長に言い付けますよ」

「ぅ……も、戻りますわ!駿河(スルガ)君無理難題押し付けて来ますもの。ね、二ノ宮君っ、黙ってて下さいな!何でも一つ言う事聞きますからっ」

「良いっすよ。じゃあ今度、日曜に野球部のマネジとして手伝ってくれるなら」

「ぇ……リコちゃんに了承を得な   

「相田−!」

「ん……?あっれ?二ノ宮君じゃない。どしたの」

「マネジ貸して?日曜来週の。一日で良いからさ」

「はぁ?何でまた。アンタん所は三人いるじゃない。姫は貸せません−。ね?日向君」

「は?オレに振るのかよ!…まぁ、カントクが駄目って言うなら無理じゃね?」

…やるわ」

「「「え?!」」」

「来週の日曜日ですわね。分かりました。でも駿河君には黙ってて?サボってしまっていた事。そしてもう一つ頼まれて下さるならばお弁当迄作って来ますわ。勿論、野球部員全員分。如何でしょう?二ノ宮君」

「マジ?!っしゃ!キャプに連絡入れよっと。副会長が来んなら絶対ェ勝つな」

「ちょ、ちょっと待って!私の了承は如何すんのよ二ノ宮君っ?!」

「え、だって副会長が良いっつったし。日向だって聞いたよなぁ?副会長の」

「まぁな。でもオ

「ごめんなさい、リコちゃん。引き受けさせて?さ、駿河君に嘆かれる前に生徒会室に戻りましょう。二ノ宮君」

「ラジャ!つー訳で悪ぃなっ、相田」



ん…?アレ?

何か睨まれた様な気がしたんだけど、先輩に。
つーか睨まれたと言うよりあんな瞳…。
俺に一度も目をくれず、二ノ宮を引っ張って去って行く。
俺にいつも呼び止める時にする様に。
学ランの裾を摘む様にして。
あ…何か嫌かも。
俺だけではない仕種、もしかして笑顔も、何だか気に入らない。
スポーツタオルで汗を拭いながら、カントクがキー!と僻みを露わにしつつ地団駄を踏み鳴らす横で、俺は苛々が募るのを感じていた。

何で他の奴に迄同じ事すんだよ、この間のキスの意味解らなかったとか、まさかな。
あんなあから様な態度取ったんだぞ?気付かない訳はないだろ。
つか気付いてないならそれって…貴女の中じゃ俺なんてそんなモン?

マジか。

あ…やっぱ苛々して来た。
不意に体育館外を見れば、雨が小降り。
きっと帰る頃には完全に止みそうだ。



……
………------



「わ……真っ暗ね」


何となく、いや、いつもより早く帰り着きたくない私の足は普段は通りもしない道を進んでいた。
小さく鼻唄を歌うが、気付いた時には悲恋の曲ばかり口ずさんでしまっており、何だか溜息が零れてしまった。
雨上がりの為か、しっとりとした空気が充満しており、水溜まりは道に幾つか出来上がる。
雲も過ぎ去り、ざわざわと木々の葉擦れの音がはっきりと耳に流れ、夕飯時の今はとても美味しそうな香りが鼻孔を擽った。
今日は…食べてみようかしら。でも冷蔵庫には何もない筈ですし…やっぱり早く帰って資料纏めましょ。
幾らか足を速め、帰路を急ぎ、自宅を目指す。
そして直ぐに入浴を済ませ、溜まってしまった資料を纏めよう。
そして勉強して、寝てしまおう。だが、不意に足が留まった自宅前、あの日の日向君がリンクする。

そ…っと口唇に指先で触れ、心臓の奥底がざわついた。

締め付けられた瞬間、きゅんとなる。
口にした名前だけれど、次には違う感情。



「ただいま……って、言ってもやっぱり誰もいない、か…。言えないわよ…いなくなる位なら、私は今のままが良いわ」



鍵を開けて、入り込む部屋は何処もかしこも真っ暗闇で…一階リビングの電気で
さえ点ける気は起きない。
携帯で姉二人に"ただいま"の文字を打ち込むが、最近では打ち込むまでは出来るが送信する迄には至らない。
というより、私の携帯には滅多にメールは入らない。
リコちゃんからも勉強の邪魔はしない!が自分の中での約束らしく皆無。
もとより、今考えれば電話番号はメモリにあるがメールアドレスはないのだ。
もしかしなくても、私には友人がいない。



「寂しい女、かしら。でも煩わしくなくて案外ラクなのよ」



ベッドやソファーにいる巨大縫いぐるみのテディベアに抱き着き、鼻にキスをしながら"ただいま"。そして返っては来る筈もない返事。
一人ごちては空虚。



例えば、告白したとして終わった想いに続きあるなら俺は是非知りたい。
付き合えなくとも友人だという成功例を成し遂げている方は是非俺にアドバイスを。
深夜1時過ぎ、もう2時が近い頃、睡魔を噛み締めてシャーペンを握り直す。
直ぐに中間テストもある為、たまには勉強もやっておかなければならない。
体作りの為に睡眠も貴重だが、学生の本文は勉学、怠る訳には何だか性格上無理で、俺は
英語を開いていた。と、何だかやたらと何か飲みたくなり、キッチンに牛乳を飲みに行けば冷蔵庫の中である物の存在が目に留まった。

貴女から貰った板チョコだ。

疲れた、そう独り言を零した時にそれを隣にいた為に聞いていた貴女がわざわざコンビニ前で立ち止まり、少し待っていて、と言うもんだから何事かと思ったのも束の間。
俺に差し出す掌には板チョコがあり、微笑む。
疲れている時にはチョコレートは適してますのよ。
そう言って、わざわざ買って来てくれた時点でドキドキしていた。
結局、勿体なくて食べれる訳もなく、冷蔵庫に直し込んでいた様だ。
取り出して、牛乳は止めにして一破片(カケラ)口に突っ込む。
溶け出した時には口一杯にチョコレートが拡がった、自室の椅子のスプリングがしなった時だ。

一瞬だけ携帯が鳴り、おわっ!?と本気で驚いた。
深夜だぞ?一体誰だよ、と突然の着信音にビクつき呆れたが、開いてディスプレイを
確認すれば固まった。
自分が。

え、…?

先輩?いやいや!今深夜だぞ。
ないないっ。
や…でも着信は確かに先輩だしな。
どーすっかな、何かあったらアレだしな。

…仕方ない、か。



『はい』

「あ、xxx先輩?如何かしましたか。深夜に掛けてしまって悪いんですけど」

『……日向、君?』

「そうっスけど。…如何かしました?」

『…………』

「…今から出て来れます?xxx先輩」

『ぇ……ぁ、はい』

「家にいて下さい。オレ出て来るんで。着いたらまた電話するし」

『ぁ、私が来ます、こんな深夜で

「何言ってるかな−。xxx先輩、女だろ。オレが来ますから。家から出ないで下さいよ」

ぇ、と…はい』



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