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「オレのバッグの中にドリンク残ってるんで飲んで下さいよ」
「ぇ……?」
「ザーメンなんて美味もんじゃないでしょ。不味いもんだってのは知ってるんで。口直しして」
「別に不味いだなんて……。日向君のですし……」
「良いから飲む!」
スポーツドリンクを差し出すと、渋々ストローを吸い上げる。
こくこく咽喉が鳴って、でも直ぐに返された。
絶対美味しいもんじゃない筈だ、精液なんて。
いや、飲精なんて男にとっちゃ夢だよ?
征服感満たされるし、サディスティックな感情も緩和される。
素直に嬉しいよ、俺だって、男だし、想いを寄せてる女性がシてくれるんだしな。
しかし、だ。
はっきり言おう、俺達は、俺と貴女は恋人ではない。
好き合ってもない。
否、俺は好きだよ。
愛しちゃってるよ。
だけど…貴女にこの想いは知られていない、片想いな訳ですよ。
俺は制服を整えると、掴んでぐしゃぐしゃにしてしまった貴女の髪を撫で付ける。
手櫛ですみません、先輩。
「有難うございます。日向君」
「オレがぐしゃぐしゃにしたんで。てか、送りますよ、外暗くなってるんで」
「大丈
「ぶくないですよ。何かあったらカントクに殺されるでしょ?オレ」
「それは駄目だわ。リコちゃん、怒らせると半端ないもの。…でも、日向君の迷惑にならないかしら…」
「大丈夫です。さ、帰りますか」
俺は僅かに笑ってみせると、心底安心した様な微笑みが返る。
その笑顔にまたやられながら、荷物だけは有無言わさずに自分が持つ。
手なんか繋げやしないのだからせめて。だって恋人なんかじゃ俺等はない。
ただちょっとだけ俺が一方的に気持ちイイだけの関係なのだ、ただのマネージャーと部員なのだ。
口唇で唄う
無音のLOVE YOU
ぼんやりとした帰路を辿り、着いた家は一軒家の豪邸。
何度見ても見上げてしまう。俺から学生鞄を受け取ると、ひらひらと軽く掌を振る。
つられて片手をあげるとふっ、と優しく微笑んだ。
あれ…ん?何かその顔、曇ってない?
俺の勘違いか、なんて思った瞬間、言った。
到って普通だったんだけれど、俺だけはきっと気付いた。
(ただいまと言っても)
(いつも誰もいないけれど)
fin…xxx
2009/04/14:UP