手を、繋いでいた。
指は絡めない、貴女の小さな掌を包む様に、俺の掌で握っていた。
橙色の空には、うっすら白い月が見えていて、外灯も点き始める。
貴女の歩幅に合わせる自分と貴女の影の差は激しいが、掌の距離は零。
何を話す訳もなくて、ぼんやりと帰路を行く。


「ぁ………何でオレのメアド知ってたの」

「ん−…あのですね、日曜日、野球部のマネージャーを引き受けましたでしょう?その時に、お弁当作る代わりに二ノ宮君にお願いしましたの。メルアド聞き出して下さいなって」

「マジ?二ノ宮か!メアド確かに訊かれたわ。成程な」

「吃驚しました?」

「そりゃ。でも、あんな事訊かれるなんて思わなかったし」


教室の中で、自分だけが別世界の人間の様だった。
嘘か真か、からかいか。
でも、俺にしてみれば最初から答えは決まっていて、躊躇わずに打ち込んだ返事。
訊かれた問い掛けには二択、どちらか一方。










or









そう、訊かれた遠回しな告白に誘導されて、俺は勿論後者の方向で。
そりゃ、"勿論LOVEの方向で"。
内心ガッツポーズかました瞬間。
放課後待ち合わせて、一緒にいられる第一歩に緊張していた俺に、普段と変わらぬふんわりとした微笑みで待っていてくれた貴女に、照れてしまう。




---じゃあ、"愛している"の方向で。順平君。


---こちらこそ、宜しく。xxx。





名前で呼び合うのは、こんなに優しかったのか、俺の鼓動がそう言う。
ずっと呼び捨てにしたかった、振り返って欲しかった、俺だけに。
僅かに染まった頬の貴女を愛しく想い、また好きになる。
きっと、いつか、絶対に慣れてしまうのかも知れないが、その時には俺から今度は言ってみるよ。


なぁ、LIKE or LOVE?


何度も何度も確かめてみれば良い。
でも、未だようやく始まった恋人の位置は甘いままが良いな、とか思うんですよ、俺は。だから、もう一度、強く掌を握ったんだ。








[douce、doux]
fin…xxx
2009/04/19:UP


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