駄目だ。眠い。

ひたすら眠い。ちょっと昼休みに居眠りしたら更に眠たくなってしまった俺は、ただ眠らない様にくるくるとシャーペンを回す。
チョークの走る音だとか、囁く様なクラスメートの話し声だとか、それさえも全て子守唄、BGM。
くぁ…っと一つ欠伸を落として、ぼんやりと窓を眺める。
嫌な位の清々しいスカイブルーは淡く白く霞んだ様に映り、やっぱり眠いとまた欠伸。授業始まって何分位だろうか、上の階の三年は何の授業だろうか、Aは総合で自習だと言っていたがBは何だろうか、先輩はBだったよな…と下らない中に貴女を混じらせる。

ヤバイ、どんだけ侵食されてんだ俺。


「はぁ、マジ有り得ね−…」


眼鏡を取り外して、目を擦る。
噛み締めた欠伸の所為で滲む生理的涙を払う。
も一度眼鏡を掛け直すと瞬間、背筋がしゃんとなる。
右ポケットから微動が生じた為、一気に目覚める、覚醒する。
テロップは……ん?
知らないメアドだ、誰だコレ。
俺はポケットから取り出した微動の正体、携帯を眺めた。
勿論机の中で、だ。
小さなサブディスプレイ、流れるテロップは知らないメールアドレス、けれども携帯会社は同じの様だ、@から後ろは俺と同じ。
誰からだ、何で俺のメアド知ってるんだよ、あぁ…メアド変更しやがった誰かだ。
そう思った俺は開くと…ん?!いや…えぇっ!


「そりゃ……」


息を呑む、初めてだ…手先が汗を掻くメールだなんて知らない。
たった1行メール。
挨拶もなしのメールに俺は心臓の奥の奥が支えている。
顔に血液が溜まる様に熱く、一つ呼吸を置く。


「そりゃあ、こっちの方向で」





……
………-----


「お疲れ様でした、日向君」


「……xxx先輩…」


「段々暑くなりますね、きっと。直ぐ5月になって、夏日とかニュースで言う様になるかも知れませんわね」

「夏が来たら、如何しますか」

「マネージャーとしてはきちんと部員の皆様には水分補給して貰います。蜂蜜レモンも作って、冷たく冷やしたタオルも常時用意しますわ」

「xxx先輩自身は?」

「受験生としてずっとテキストか単語カードを手にしてますの。そして、練習中の誰かさんをそれでも気にして小さくドキドキしてみたり?」

「へぇ」

「つまり、そうやって夏も過ぎるわ。きっと。でも、秋が来ても冬が来ても同じそうやって誰かさんを見て過ぎますのよ?一番、近くにいたいと思いますの」

「……良いんですか」

「私の方こそ?」

「俺、案外嫉妬深いっスよ。カントクにだって、伊月達にだって常に苛立つ時あるし。駿河会長や二ノ宮なんて敵に感じてるし」

「でもお顔には出さない人」

「これからは出しますよ」

「ねぇ、日向君じゃなくても構いませんか?私の隣、貴方は私の隣が貴方でなくても大丈夫?」

「言ったでしょ。あの時だって、そこにいたいが為にオレはxxx先輩にあんな事したんですから」

「では敬語も要りませんわね」

「呼び方も、オレの好きな様にしても?」

「私も好きな様に呼びますわ」

「じゃあ、」





……
………-----

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