01


消しにくいモノって、この世にはごまんとあって。
けれども、躍起になって消そうとしたら、取り返しがつかなくなる。


だから、ゆっくりゆっくり、消して行くんだ。
例えば、淡く淡く…最初から淡いモノならば…。


ゆっくりゆっくりと普通の消しゴムで。
消したくなくても、消さなくては。
最近、やけにそう思っているのだ、俺は。










「私、イタリア行ける事になったんです」










嬉しそうに言った。
たった一言、笑って言った貴女だった。
ベッド縁に腰を掛けながら、参考書を広げながら。


貴女の残留香がフワリと風に乗った。
留学試験で、受かったって…嬉しそうに。
でも、やっぱりあの日は泣いたまま。


俺が右を行って、貴女が左に行った。


大空を、大きな希望を乗せ飛び立つ。
貴女を乗せた鉄のカタマリが、俺を見下してた。
小さな梅の花が…。
小学校の入学祝に貰ったか。
紅梅が乱れ咲いてた。


次は6年後、桜が、蕾が沢山あったか。
卒業したのだと思った。




次は今。
そして、今日…-----。






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