秋雨が長引いている。

携帯に一通のメールが入り、俺の気持ちを落胆に追い込んだ。
すっかり基盤になったキミが居座る日々に、こうやって不意にぽっかり穴が空く。
諦めは、互いに早い。
一夜限りが嘘になってどの位だ。

今年は台風が上陸する数が多いからか、雨が多いが、晴れているのをキミが嫌いだと知ると、俺も晴天は嫌いになった。
雨さえ降れば、キミが日中も外に出て来れる。
そんな雨を、一転して好きになった。

仕事場を、現場を一歩出れば、キミとの世界が在る。
約束なんて大凡の宛の無い事もせずとも、たった一言で繋がれる。

待っています。

その一言で、俺は迎えに行ける。


「会いたかった…けどな、キミに」


待受に表示したのキミの名前に、接吻けして仕舞う始末。
途方の無い落胆は、重みを増して、キミからのメールの一字一句を脳が拒否して行く。


また、今度。
また、お迎えに来て下さい。


また、っていつだろう。
明日か、明後日か、ずっと先だろうか。
フォルダのキミに、指先で触れれば、呼吸が細くなる。
苦しいのは、心臓のもっと奥の奥、末端だ。


「会いたい…会いたい。会いたいんだよ…っ」


ハンドルに拳をぶつければ、ハッとする。
会いたくて堪らないキミは、今夜は如何だろうか。
俺との逢瀬、密会を果たせずに、旦那に抱かれるのだろうか。
一緒に食べる筈だった、この添え付けの写メ、俺の為の豪華なフルーツタルトを気持ちを圧し殺して旦那と食べるのか。
俺の為に磨いた身体と知らずに、旦那に抱かせるのだろうか。


「ハハハッ!だとしたら…ヤバイじゃん。旦那があの甘利だろ?でも、俺を想ってるキミとセックスしちゃう訳だ。傑作だな。

待っているのは、甘利、お前じゃないぜ。もう、待たれているのはお前じゃなくなってる。さぁ、君は如何(ドウ)する?」


落胆から一転。
愉快で堪らない。一噌の事、全てバレて仕舞えば、更に愉快だ。
目一杯キズ付けば良い。
勿論、キミが。そして俺が手を取り、俺無しの生活を送れなくなれば良い。

そう、思うと…ラクだ。


が…それよりも、悔しくて憎たらしくて堪らないのだ。
俺に涙見せながら、結局、旦那に、甘利に抱かれている。
淫らに喘ぎを溢す。
名前を呼んで、嘘でも愛してると口にする。
それが、きっと俺の中で赦せない。

だって、さ…
キミは…キズ付いてるだろ…

真実(ホントウ)は笑うのは苦手なのに、楽しく無いのに笑っては誤魔化す。
大丈夫です、って自分に言い聞かせる。
愛せていますよね、って自問自答する。

でも、泣いてる。

泣いて、泣いて、泣いて…。
そうやって、俺も甘利も、求められている。


「俺だけじゃ、駄目かな…?」


その答えは、今夜は遭えない俺に、返る事が無い。


Fin…xxx
2016/10/13:UP


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