いつだって、君が良い。

その言葉を、甘利さんが言う度に、私には何が出来ているだろうと考える。
だが、いつだって答えがなく、堂々巡りだ。
けれども、一つだけハッキリ言える。

私は甘利さんが良いとは、言えない------。

仕事はwin winだと、誰かが言っていた。
身体は、いつの間にか甘利さんが思うように従順になってくれたのに、いつまで経っても快楽の間にユラユラと交錯している。

癖、だとは認知しているのだ。

幼い頃から、

このひとはなにをわたしにもとめているのだろう

という事ばかりが頭を埋める。
気持ち悦い事が嫌いな訳では無い。
寧ろ、その場限りの要求は熟せているのではなかろうか。
だが、仕事はそれ以上を要求されている物だ。
それを察知して、完璧にこなすべきではないのだろうか。
ただ、要求されている事を熟す事は、ただの作業だ。


「妻、って仕事は…ううん。女、って仕事も良く解らないのかしら…私。歳ばかり取って、何も解らない」


リビングの片隅で、膝を抱える。
目を膝に押し当てて、堂々巡りをしながら、大概、無理矢理にでも解決策を見出だすのだが、今夜は何だか纏まらない。


「……雨だわ…」


立ち上がり、肩からずり落ちたストールを掛け直し、窓際に向かう。
冷ややかな部屋は、スリッパの音でさえ響かせる。
そっとブラインドを指先で開いて、外を覗けば、ネオンに紛れて雨粒が見える。
静かでない理由は、この雨が正体だ。


「…雨なら…お外でも音がそちらに集中してくれるかしら」


fin…xxx
2016/10/13:UP


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