俺だけ見てればラクなんじゃね。

浮き足立つ新入生の波の中で、初っ端から空気と化そうとしているのが明白だった。
知り合いが誰一人としていないようで、入学式が始まる手前でも机に突っ伏していたっけ。
俺自身も殆ど知っている奴なんていなかったのもあり、自然とそういった奴を嗅ぎ分けるのには時間は掛からなかったんだ。
しかも、同じクラスで隣の席の貴女は第一印象からきっと美人の部類。
でも、取っ付き難い、堅苦しい。
きっと、滅茶苦茶暗い根暗に認定されつつあった。

何度も朝礼で倒れては保健室行き常連の体が弱いコで、尚且つ殆どの授業中は眠っているのか机に突っ伏している不思議ちゃんになった。
根暗が覆ったのは、席替えをして良いとなった際、クラスメイトと話す場面が目の前で繰り広げられ為だ。


---話し合いで決めて良いって先生言ってるんだよね。
xxxさんは何処が良い?

---…何処でも良いのですか?

---うん。
決まっちゃう前に決めたが良いよ!

---…では、一年間この席でいたいです。
その後に席替えがあるならば、私を除いて席替えをなさってくだされば。

---ずっとそこで良いの?!
ぁー、と、うん。
判った!じゃあ、xxxさんは一年そこねっ。


ありがとう、と一瞬だけ口許が柔らかくなったと思う。
話せると知り、無表情ではないのかも知れないと知れば、興味が沸いた。
だから、貴女の隣を誰かに譲るのは惜しくなった訳である。


---あ、俺も一年間この席で良いわ。

---マジ?
じゃあ、神永君も一年間固定ね。


一番後ろ、貴女は窓際の席で、その隣は
俺。
これからは真横を見れば目の保養がいる訳だ。
背後に誰も居ないのは都合も良いし、居眠りし放題と何とも美味しい席じゃないか。
それだけだった、4月始まり。



fin…xxx
2016/09/26:UP


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