Key of Life07(8/43)




このお話はトライアングル。


一つの国があり、この国のその国民達には、必ず特別な能力が備わっていた。


このお話には、3人の主人公がいる。


皇女である独りの女の子は、ごくごく普通の平民である、独りの男の子ととても仲慎ましやか。
男の子は特別な能力が実際は優れていたが、余りに周囲が目立つ為、誰にも相手にされずに育ち、性格は廃れていた。
一方、女の子の方は皇女という事もあり、能力が優れているのは当たり前で、国民からその能力を必要とされ引っ張りだこだ。

男の子の能力は、"ナオス"能力である。
壊れた思い出、壊れた物…勿論、壊れた人間もその対象だった。
一方、女の子の能力は"カナエル"能力だ。
ヒトが恵みの雨を望めばそれを叶え、煌めく夜空を望めばそれを叶える…相手が望む事を叶える事が出来た。


女の子は男の子が大好きだ。
初めて"自分をくれた"人だったからだ。
男の子はただただ…"自分を見ている"女の子を独占したかった。
男の子にとって女の子は初めて"自分を見てくれる"人だったからだ。
男の子にしてみれば、ただ単に、自分の欲の為に女の子に接していたのだが、女の子はそれでも構わなかった。


二人に共通しているモノを、互いが分け与えるコトで補えていたから。


二人は本当に仲慎ましやかであり、どんどん密接になって行った…。




もう一人の主人公は、その国の宮廷に仕えている独りの魔法使いだ。
その魔法使いは、女の子のコトならば何でも知っていた。
産まれる前から知っていたのだ。
宮廷の奥の奥…更に奥の部屋に居た。
宮廷の様々な秩序を、事実的には魔法使いが保っているのだ。
皇帝は魔法使いに、皇女である女の子の監視を命じていた。
命令通り、魔法使いは女の子を監視した…。
そうして、いつの日にか…魔法使いは淡い想いを女の子に抱く様に為っていた。
必然と言われれば必然で、叶うコトはなくとも、魔法使いにしてみれば"監視出来るだけ"で幸福せだった。


そうやって、誰よりも女の子に特別な想いを抱いていた為に、些細な変化も見逃す事はなかった。




















淡々と…。
けれども、強弱を付けては語る様に内容を俺に告げて行く。
瞳を閉じて、雨の音に混じり透き通るオマエの声を感じる。
物語を頭に浮かべ、まるで頁でもめくる如く、風景は変わる。
愛しい時間を共有したあの頃と、何一つ変わりなく…。



















ある頃、男の子も女の子も成長するに連れて変化するものが出て来た。
それは国自体にも及ぶモノで、他国からの移住民が溢れてしまう事と関係していた。
内輪だけの世界で生きて来た男の子は、外部からの人間と酷く密接して行く様になり…。
逆に女の子は皇女という事もあり、益々内輪に閉じ込められる様になった。


外部からの人間は、凝り固まった考えを打ち砕く力を持っており、男の子を内輪から外部に引っ張った。
廃れていた男の子は、外部の考えに触れ、新たに自分を見詰めてくれる人間と出逢う事になる。
そうすれば、廃れていた心も和らぎ、何より能力も更に高まりを見せ…。
いつの間にか、同じ能力を持つ国民達の先頭にまで立つ様に成っていた。




一方、女の子は戸惑っていた。
男の子は言った。










『僕だけを見ていてよ。


僕だけにその力を使ってよ。



僕は皆みたいに君を使い捨てたりしないよ。




僕だけの為に、君が欲しいんだ。









ねぇ、僕が君を必要としているんだ』









確かに男の子はそう告げていた筈なのに…。
男の子が殻を破り、様々な顔を見せる度、嬉しさの反面、女の子はある感情に押し潰されそうだった。
それは、










男の子が一人になってしまう-----










そう、"不安"という感情。
初めて必要としてくれた人に置いて行かれる恐怖が、女の子を蝕んで行ったのだ。












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