Key of Life04(4/43)
「何で未だこっちに居るんだよ」
「外山先生が呼んだんでしょう!?じゃなかったら僕、帰りますよ!」
「冗談だって。つ−か、腕上がってんじゃねぇの?スピードもな」
「本当ですか!?…ぁ〜でも…」
「何だよ」
「いや…何か気持ち悪いなぁって」
「ぁ?テメェ、それ如何言う意味だよ」
「痛っ!襟元引っ張らないでくださいよッ。だって…滅多に言わない事を外山先生が」
「俺だって人を褒める事位あんだよ」
ほんの少してこずるであろう手術(オペ)だった。
伊集院に協力を依頼し、完璧に終わらせた午後。
からかい混じりに、他愛がない話を繰り返していた。
「あれって…##NAME2##さん-----ですよね」
「んぁ?そうだな。あ、髪巻いてんな」
「凄く久し振りじゃないですか?相変わらず細いな〜。大丈夫かな…やっぱり後遺症激しいんだろうな…」
「大丈夫だろ。ついてんのが何てったって…」
北洋の中庭。
一冊の小説であろう文庫を開き、この寒い中、ストールだけを羽織ってベンチに腰掛けている。
誰一人としていない中庭に、静かにヒトリで。
変わらない長い黒髪が、今日はふんわりと巻かれていて、愛らしさを漂わせていた。
珈琲片手に手摺りに体重を掛けながら、俺は分厚い窓からオマエを眺めていた。
洋服も俺がいつだったか贈ったもの。
頁をめくる指先は相変わらず細く、左手の薬指には細いリングが光った。
突然突風が吹きすさみ、オマエの帽子を掠う。
髪を押さえた時には既に遅く、小説をベンチに置き去りするとミュールで小走りする。
俺は自然と身体が動き、中庭まで続く扉のドアノブを捻る。
「##NAME3##………」
「##name2##っ!」
オマエの名前を呼ぶ瞬間、白い白衣を来た男がオマエの名前を俺より先に呼んだ。
帽子を片手に優しく冠せると、微笑んで髪を掬い、後ろに流しては「走るな」と諭す。
俺は立ちすくみ、ドアノブからゆっくりと手を離す。
僅かに開けられたドアはピッタリと閉じて、オマエと男の声は遮断させる。
変わらずに差し出すソレはきっと弁当で…。
俺の好きな味が、目一杯広がっているのだろう。
綺麗に笑い、曲がっていたのだろうか。
男のネクタイを正せば、俺が好きだった掌が頬に触れる。
「指輪………」
「そうだな。結婚したんだろうな」
「でも、そんな…」
「大丈夫だっつっだろ?何たって付いてんのが藤吉だぜ?見ろよ。あの
笑顔------」
…
……
………------
逆鏡
-*SAKASAKAGAMI*-
………-----
……
…
板ガムを包み紙から出せば、ラ・フランスの香りが鼻孔を擽る。
蘇るのは、オマエがくれた味。
ミントを辞めた俺には、確かに繋ぐ為の材料が必要なのだ。
愛してたこと
愛されてたこと
君が教えてくれた
Key of Life
「伊集院、次のカンファレンス行くぜ」
「ぁ、はい」
大好きな黒も健在で、控え目なおしとやかさも変わっていない。
仕種一つ消えない。
縛られたままなのは、俺。
「如何した?##NAME1##」
「…誰かに見られていた様な…。視線を感じましたの」
「視線?」
「ぁ、けれどもその様な不審な視線ではありませんわ。こう…とても優しい。
温かい、視線でしたわ」
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