Key of Life02(2/43)
伸ばした腕はダラリと力を失したままで、俺が咄嗟に伸ばせば、オマエに何センチとない距離に近付いた。
見上げる様に鈍色(ニビイロ)な瞳とぶつかれば、見た事がない表情に触れる。
-----##name2##、…
両瞳から溢るる涙。
一度も俺の前で涙を見せた事のないオマエが、初めて俺に流す。
----必要(イ)ラナイノネ…
ズル…り-----
…
……
………-----
焼き付いて離れない一破片。
綺麗に絶望を抱いた濁る瞳、頬を伝う涙、紫色の口唇。
まるで俺を壊す様な笑顔をしていた。
今は誰かの
そばにいるのかな
君が出て来る
夢の中に
確かにあの時、救えた。
繋ぎ留めた命だった。
何度も術中に危険な橋を渡らされたけれども、成功しただけで…オマエがこの世の中に留まってくれただけで良かった。
安定する脈に安堵を覚え、生きている事に縋る様にオマエの掌を握っては何度も泣き崩れた。
良かった。
生きていてくれて、
良かった----。
目覚めないオマエに、日に日に恐怖を覚えさせられてはいたけれどもだ。
病室に通う度に顔色は戻りつつあり、腕の傷も痂が見え始める。
着々と身体を取り戻すオマエが、確かにそこにいた。
そう、だ。
確かに、そこにいたのだけれど-----。
---圭介…?
なぁ、あの時、あの握っていた掌を…オマエは藤吉だと思っていたのだろうか。
目が覚めたと看護師から報告を受け、急いで…まるで空気の気圧ですらあの時には俺の敵の様に振り払い、廊下を走った。
誰も瞳には映らなかった。
ただ、オマエに…
##name2##に会いたかった。
---貴方様も…私を救ってくださったお医者様?
---…ぇ……?
穏やかな目線の先には、確かに俺が存在(イ)るのに…。
黒い眼(マナコ)に映るのは藤吉じゃないよ。
確かに、俺なんだよ。
けれど、穏やかな聞き慣れた声は藤吉の名前を呼ぶ。
そして『違う』と判断しては表情は戸惑った。
曇りを見せる表情(カオ)は俺に叩き付ける。
貴方様ハ、誰-----?
愛してたこと
愛されてたこと
君が教えてくれた
Key of Life
あの時、俺に対して言ったオマエの一言が…今更になって解るよ。
壊すんだよ。
イタイんだよ。
刺さるんだよ。
殺すんだよ-----。
どんな言葉を与えれば、あの時連れて来れただろう。
隣を見ていなかった俺の過去。
振り返った今は、遥か向こうの果てにオマエが泣き崩れているじゃないか。
そんな弱い##name2##は要らねぇよ。
そう言って抱き締めれば、強くなってくれただろうか。
まさか。
女のオマエは真綿で包まなければならない位、弱いのは承知していた筈だろう。
俺がちゃんと護るから。
まさか。
そんな事、泣かせる事も今まで出来なかった俺が…。
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