Key of Life-20(21/43)





口元を、自らの掌で必死で押さえ付けた。
声が上がりそうだったからだ。


ディスプレイには貴方と一緒に映る微笑んでいる私。


とうとう頭の中の警鐘は酷くなり、いつもの頭痛も伴う様に引き起こす。
耳を塞ぎ、肩を震わせて、口からは止めて…と拒否を図る。
だが痛みは引くどころか強さを増して襲い掛かる。




「##name1##、…」






その瞳で見詰めないで。


その声で呼ばないで。


その指先で触れないで。







ネェ、モシカシテ、私ハ貴方ヲ知ッテイルノデスカ…?




「私、帰ります…っ」




目覚めた貴方は私を窺う様に名前を呼び、その指を伸ばす。
その指先が恐ろしく、遮断する如く叫びにも似た声で離れる。
コートとバッグを掴み、逃げる様に仮眠室を飛び出した。


一瞬だけ、貴方が私の口唇を撫でて、顔が近付いたその一瞬、口唇を待った自分が憎たらしい。
私には圭介がいるのだ。




「如何して、私…っ。


外山先生が気になるの…」





……
………-------










鈍色のこの瞳(メ)に映ったのは、耳を塞ぎきつく瞼を閉じたオマエだった。
身体が言う事を効かず、思考も鈍かった。
上半身を起こし、如何しても触れたくて…指先を伸ばした。


触れた頬の滑らかさ、開かれた瞼、映る俺の姿、薄いルージュの口唇をなぞり…拒まれる事もなかった為、ゆっくり近付いた。
後、数センチでの距離に、気付いた様にオマエが逃げて仕舞う。




「何でも良いよ…もう、如何でも良いから…」




指先に付いたルージュに、自らの口唇を寄せる。
触れたくて、触れたくて…何より抱き締めて仕舞いたくて、もう一杯一杯だった。


思い出さなくても構わない。
せめて、だったら…だったら、もう一度。




「俺を好きになってくれよ…っ…##name1##、ッ…」













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