Key of Life(1/43)



崩れた鏡は、拾う時に振れればズタズタと指を切る。


















出会えた事が
本当に良かった





純粋に
そう思いたかった

















食堂でお世辞にもとても美味いとは言えない、一般の焼き魚を突いていた。
箸先でホロリと身離れするそれは、塩分が足りず、物足りない。
朝田は始終沈黙で、一方的に話す里原はそんな朝田お構いなし。
俺はそんな奴等の目の前で、鮭の切り身を口に入れた。


以前ならば、如何だろう?


誰かの俺に向けられた食事をしていた筈だった。
プラスチックの箸も、こんな小豆色した質素な物でなく、こだわっていた。
薄い味噌汁を啜り、至って穏やかな気持ちで朝田達を見ていた。




確かに丸くなった俺は、これまでをも丸く見ている。
また酷く寒い季節を迎え、この明大にも木々にイルミネーションが輝いた。
昼間は何とも重そうに電球を抱える木々は、突風に煽られて微かに揺れた。











「先行くぜ」


「ぇ、もう要らないの?外山先生」


「見せ付けられんのは趣味じゃねぇんだよ。つーか、コレ不味いんだよ」


「ちゃんと食え。食べないと持たないぞ」


「まだ昼休みはあるだろ。コンビニ行って来る」


「ちゃんと食べなくちゃですよ〜」


「解ってるよ;」













半分程、未だ残したまま…この場所を離れる事に徹する。
引き止めて極力食べろと縛り付けられるのはうんざりだ。
トレーごと回収場所に渡せば、入れ違いで伊集院が俺の真横を通る。
不意に俺を見ると、放棄したトレーの残飯を見て哀れんだ様な瞳を向ける。
何気にコイツは俺のナカミを知っているものだから、やり辛い。
ふっ、と苦笑してみせれば謝る辺り、こちらが惨めになって来る。












「コンビニ行って来ようと思ってよ。ここの飯、不味いんだよ」


「だったら良いですけど…。ちゃんと食べてた方が良いですよ、外山先生」


「解ってるよ;オペ看と朝田と同じ事言うなよな」


「ハハハっ」











呆れた様に見遣ると、離れたテーブルの二人を伊集院も見詰めた。
微笑みを向けると、あの二人らしくあると笑う。
俺はそのまま空気と流れる様に、食堂を出て行く。



無造作にポケットに手持ち無沙汰な、行き場ない両手を突っ込んで。

















強がる影に
隠れる所を





見ないふりして






流してたのかな















この季節は、イタイ。
寂しい等の温い感覚は一切消え失せたが、ただひたすらイタイ。
口一杯に広がるオレンジの甘ったるい味。
放り込んだ飴玉は俺の唾液に絡まり、溶けて行く。
普段は何かしら入っている胃の中で酷く暴れ、後々凭れて泣きを見る。
求めていた味ではないと、ティッシュを一枚引っ張り口から出した。
包み、1メートル程ゴミ箱に目掛けて投げ込めばNice Shoot!
一発で入りニヤリと笑った。





けれど、直ぐに虚しくなるのが俺のオチ。










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