Key of Life14(15/43)




「藤吉です。えぇ、##name1##さんは大丈夫です。取り敢えず、安定してますから。私が側にいますから…えぇ。はい、大丈夫です。今は起きて来ていて、珈琲でもと思っておりました。…はい、では失礼します」










自宅に掛かって来た電話…。
俺の役目は監視も兼ねていて、直ぐに君の執事に連絡を入れてしまう。
一時眠っていた君は、気怠そうに起き上がり、ふらつく足取りで硝子窓に掌を付けていた。
そんな君は、ぼんやりと落ちる滴を眺めていた。
何を考える訳もなく、ただ…見詰めている。
遠く、遠くを-----。




俺にはそうとしか映らず、真横に立ち、同じ景色を眺めるのだが…君ではないのでやはり分からない。
ス、と珈琲を差し出せばようやく俺に気付いた様でふんわりと笑う。
香りが君に届いたのだろう、


---良い香り…


そう呟いて一口啜る。
不意に俺の名前を呼ぶと、小首を傾げ、また微笑んだ。










「何だ?そんなに嬉しそうにして」


「嬉しいんですもの。雨は騒音を消して、自然の音しかしませんのよ。


煩いのは…怖いわ。


ずっと耳奥で誰かが呼びますの。圭介ではない声で…ずっと…。でも、




誰だか判らないんですの」











しゃがみ込み、マグカップを無造作に置くと、膝を抱え込み、直ぐに両耳を塞いだ。
俺の声も聞こえない様にして、強く。
外は窓を叩く程の豪雨。
君は小さく震えて、「止めて…」と切実に呟いて行く。











「大丈夫だ、##NAME1##。ホラ…俺しかいないだろう?大丈夫、な」












頭を優しく叩けば、うっすらと涙を浮かべた瞳が俺に曝される。
ゆっくり耳から掌を離せば、指先で俺の頬に触れて…直ぐ様、抱き着いた。
精一杯力を込めて。
俺は笑って抱き締める。
胸元で嫌々と首を振る君は愛しくて仕方なく、この細い腰を折ってしまいそうだ。









「##NAME1##、もう寝ようか。おいで-----」








姫抱きにすれば、しがみつく様に俺の首に両腕を回す。
首元に顔を埋めて、怖いと…震えた声で呟いた。










目を離し過ぎたな…












ここ最近は安定していた為、野放しにし過ぎた様だ。
外山との接触で、妙に感覚を揺さ振られ…恐怖心を煽ったらしい。
呼吸は定まらず、帰宅してからは俺から離れずにいる。




必死に抱き着いたまま。












「##NAME1##、ほら…横になろう。な?」


「圭介は…?未だ寝ませんの…?」


「そんな潤んだ目で見詰められるとな;



抱きたくなるだろう」





「…抱いて…。抱いてください、圭介。一杯にしてください…考えたく、




ないわ-----」








髪を指先に絡め、穏やかに笑みを向けると、細い君の指先が伸びる。











ギシ…っ-----










ベッドのスプリングが鳴けば、君に跨がってみせた。
視線を絡ませ、片手を顔面の真横に付き、堅苦しいネクタイを解いた。
途中、君の指先が手伝い、シュルリと首回りから抜け落ちる。
カフスボタンを左右外し、Yシャツの透明な釦をゆっくりとひとつひとつ外し、君は優しく笑った。










「##NAME1##思い切り、





悦(ヨ)くしてやるよ」












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