Key of Life12(13/43)




車から飛び降りる様にして、濡れる事すらお構いなし。
靴には泥が跳ね、ズボンの裾は水を吸い上げている。
オマエの名前を叫び、駆け寄れば直ぐに抱き留めてしまった。










「外山、##name1##のバッグを貸せ!」


「ぁ、ああ!」




「大丈夫だ、##name1##。大丈夫…大丈夫だ」










片手でバッグの中身を探り、一枚のビニール袋を取り出せば、パン…っと乾いた音を響かせ空気を入れる。
すると直ぐ様、オマエの口元に宛がい、髪を優しく…撫で付けるのは








藤吉だ-----。









「大丈夫だ、な?##name1##。ゆっくりで良い。ゆっくり…そうだ。良い子だな##name1##。ゆっくり…大丈夫…」




「はぁ…ハァ、は…ぁ、。ケホっ、ハァ…は、ぁ…-----」





「薬を飲もう。な。大丈夫だ…俺がいる。大丈夫。眠って良いよ。俺はいるから…大丈夫だ。


ほら…水を-----」










ツ…ぅ-----










小さな錠剤を2粒、オマエの口に指先で入れ込み、ゆっくりと薄く開いた口唇にミネラルウォーターのペットボトルの口を宛がった。
流し込む水の半分は、口端から零れ、首筋を伝い、洋服に染み込んでしまう…。




虚ろであり、曇る瞳。
指先は藤吉を求め、小刻みに震えたまま伸ばす。
さっ、とその指先を握り締めると、紫色に変色した口唇は唱える様に…呟いては求める。












---圭介…















夢ならば
早く



覚めてほしいよ








よそ見してたら













君がいない















あの時、どんなに命が危うくとも……抱き留めれば良かったんだろう。









----ごめん、##name1##













ただ、そう一言告げれば良かった。
置き去りした事を、あの時点で後悔すれば良かった。
最初で最期の俺への涙。










最期の、俺への涙-----。











愛してた事
愛されてた事




君が教えてくれた





Key of Life















「悪い、外山。話はまた後日」




「藤吉………





悪い-----」












ザ…ァァッ-----












睡眠薬と安定剤で落ち着きを取り戻したオマエを抱き、藤吉はそんなオマエに安堵の表情を寄せる。
俺に一言告げると、器用にスーツの上着をオマエに被せ、雨を避けては助手席のシーツを倒す。
酷く優しく、横たわせては…自分が濡れる事も全く気にしない。

エンジンの音。

遠ざかる車。











何で…俺は…











「抱き締められなかったんだよ-----っ?!」










ダンッ、と音を響かせて、ポールを殴った。
僅かに揺れるその柱と、爪を食い込ませた為に掌に血液が滲む。
錆から塗装が禿げた柱は、掌どころか甲までも切り傷を生んだ。
口唇を震わせ、噛み切れば、鉄の味がじんわりと口腔を占めて行く…。






響くのは、豪雨の雨音だけだ…。










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