Key of Life09(10/43)




いつの間にか…俺達を包む景色は雪模様に移り変わっていた。
話す度に口唇は開き、白い吐息が空気に溶けて行く。
一定のリズムを保つオマエを遮られず、否…遮りたくなくて、俺は「寒くないか?」の一言も訊けやしない。
たまに変わる表情が、余りに淡くて…。
話の結末が怖いのも、事実。





まるで俺とオマエみたいで----。

















一方、魔法使いは粉々に砕け散った鏡の破片を、元に戻す様に修復していた。
破片を拾うその度に、幾度となく指を切りながら。
咽喉がカラカラに渇こうとも、呪文を一破片、一破片に込め…パズルのピースを当て嵌める様に。


魔法使いは知っていた。
何故、修復するのに傷を伴うのかを。
それが…







女の子の心の傷みだったからである-----。







真っ暗な部屋の中、長い月日を掛けてようやく、最後の一破片を埋め込んだ。
そしてステッキを振りかざし、呪文を唱えた。
すれば、女の子は何事もなかったかの様に目を覚ました…。



水晶から女の子と、その女の子に付き添っていた男の子の姿を観る。
目が覚めた女の子の掌を包み込む様に握り締めた男の子は、目覚めた女の子を抱き寄せた。
両目から盛大な涙を流して…。













これで良いのだ…












魔法使いは複雑だった。
女の子が目覚め、また男の子と笑い会える日々が待っている。
その女の子を観ているだけで幸福なのだから。
魔法使いは笑った。
それだけで"幸福"だとした魔法使いは、心底喜んだ。
だけれども-------。


















『貴方様は…どちら様?』

















女の子の最初の一言だった。
淡く淡く笑い、優し気な眼差しで男の子を眺めては口にした。
男の子は、絶望の淵に立たされている様な感覚に陥った。











女の子は、男の子を忘れていた----。












魔法使いは慌てて光を鏡全体に映した。
すると、何という事だろうか。
額縁が逆さまではないか。
魔法使いは暗闇での作業で気付かなかった。
額縁が反対にされた鏡を修復する…つまり、逆さまに映ってしまう鏡にしてしまったという事だ。
暗闇でなければ、この粉々に砕けた鏡の破片は見えない。
だから気付かなかった。











まさか、男の子を忘れさせたのが自分だっただなんて…。
魔法使いも悔やむに悔やみ切れずにいる。

















忘レタ----。












その言葉で、オマエは話を途切れさせた。
降り注いで来る雪を眺め、今にも溶けてしまいそうな虚ろな瞳で…。
その横顔を眺め、俺は胸が押し潰されそうだ。







忘れられた、そんな俺。







かじかんた指先を丸めた。
まるで話は馬鹿だった俺と、キズ付けまくったオマエの様で仕方なかったからだ。
悔しくなったのは。














「……女の子は、さ。そん時、どんな想いだったんだろな。忘れたい位、男の子にキズ付けられたんだよな…」










要ラナイノネ-----

















出会えたことが
本当に良かった



純粋に











そう思いたかった
















http://jewel44.b.to/abc/11?.ref=mail











- 10 -
|


[Back]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -