Key of Life08(9/43)




魔法使いは、堪えられずにいた。
男の子を見詰める女の子は、どんどん"表情(カオ)"を亡くして行っていたからだ。
どんなに女の子が笑っていても、人形の様に無表情になってしまう…。
魔法使いは与えられた部屋から出ると、女の子の部屋に入り込んだ。










『大丈夫です。




貴女は私が傍にいます。




哀しまないで…。




私は貴女のお傍にしかいられない者です。





怯えないでください。
私は、貴女を----』











魔法使いは諭す様に告げると、何の能力をも使わずに…ただただ、女の子を抱き締めた。
髪を撫で付けて、ただひたすら『大丈夫』と口にして……。




女の子はある時、魔法使いに一度だけ接吻けた。
すると魔法使いはゆっくりと皇女のベッドに倒れ込み、すやすやと寝息を立て始めた。
すると女の子は、魔法使いに与えられた部屋に忍び込んだ。


女の子は知っていた。
外に出る事のなかった魔法使いが、外の情報を入手出来、更には使いに出れる秘密が、



大きな鏡----




に備わっている事を。
忍び込んだ女の子は、その大きな額縁が立派な鏡の前に立った。



すると、女の子が映る。
それは至って外見には変化がない鏡であった。
だが、女の子は驚愕した。
何故ならば、そこに映る女の子はとても嬉しそうに笑っていたからだ。
自分は笑っていないにも関わらず、飛び切りの笑顔で…。




女の子は酷く胸を傷めた。
そこに映っていた自分は、過去の自分だったからだ。
男の子の"隣"を歩いている感覚を、しっかり実感していた時の自分が映り込んでいたからだ。
女の子は鏡の中の自分が憎たらしくて仕方なく…。
鏡の真横に立て掛けてあったステッキを振り上げた。
物心付いてから初めての大声を張り上げて。










ガシャん-----!!!










とてつもなく大きな音がした。
その途端、パチリと魔法使いは目を開けた。
跳び起きた魔法使いは、普段外を見る為に使用している水晶を覗き込んだ。


嫌な予感がした…。



一つ呪文を唱えれば、自分の部屋へと飛んだ。
すると如何だろう。
女の子がパタリと倒れているではないか。
魔法使いは周囲りを見渡した。
すると…










粉々に崩れてしまった
鏡の破片-----











それが女の子に降り注いでいた…。





魔法使いは女の子を絹のベッドに横たわらせると、魔法陣を床に描いた。
そして破片が降り注いだ事に出来た傷を治す。





女の子はただ、ひたすら眠り続けた。
それは男の子の耳にも入り、細い手を握りおいおい泣いた…。
外見はただ美しく、女の子だというのに、中々目を覚まそうとはしてくれなかった----。













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