けーどっとくうそうじぎゃく




一度だけ、貴方を殺したいと…切に思った。




直ぐに冷静さを取り戻し、誤魔化す様に笑ってみせた。
週刊誌、ワイドショー、熱愛発覚、貴方の名前、可愛らしくスタイルが良い女性の名前、お忍び旅行…切りがない様だった。
高級なジュエリー店、今日の隣は確かに私。
簡単にどれがイイか、だなんてショーケースを眺めているけれど、私の意見は第三者的目線を求めているのでしょう。


貴方の香りが私を包むけれど、同じフレグランスなだけであり、貴方に抱かれたからではない。


目深に被る帽子、サングラス。
私と一緒だからとて、噂にもなりはしないのに。
キズが付くのは貴方ではなく、誹謗中傷は全て私が背負って行くだけなのだが、その口は平気で零す。




---君だって嫌だろ?




「どれがイイっスかね?やっぱリングかな」


「ねぇ、黄瀬君…」


「何?ぁー…文字彫って貰おうかな」


「今日は一人?」


「は?意味解んない質問だな−。君と一緒じゃん」


「そう…」




私に素知らぬ振りで貴方が店員に指を指すのは…私の見詰めていたブレスの真反対のリング。
小さな紙に記された英字の二人分の名前と暗号。
見えた瞬間、ボロボロと足元が崩れる気分を笑う。
畏まりました、ちらりと私を見詰める店員が伏し目がちに私から視線を剥がす。
私は初めてだったのだが、貴方は行き着けの様で、店員は貴方より私の顔を見抜いた様だった。


口元は貴方を詰(ナジ)る言葉を必死にひた隠す三日月。
目線は店員の手元を刺す。


握ろうとしてみた私の指先軽く擦り抜けて、メシ行くかとサングラスを直す。
貴方の事ならば何でも判るわ。
ホラ、携帯を開いて文字を打つ表情が何て格好良いのだろう。
満足そうなのだろう。


私は頭で疑問符と闘い、ある言葉を貴方の背中に叩き付けた。




「黄瀬君、殺したら貴方は私の物になるわね」




綺麗に綺麗に笑ってみせたら、貴方の形相がとても面白い程に歪んだものだから、楽しくなる。
何度、こうやって脅すのかしら。
私。




「何やってんスか、xxx。早くしろよ」


「……ん、ごめんなさい」




それは私の頭の中でのお話。
だって、結局、愛されてないから怯えるのは私の役目だと叩き付けるのが貴方。





fin…xxx




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